「お前ら捻くれてんなぁ」 

「うるさいっ!」


 またも夜鳥くんの呆れたような呟きに、女子が叫んだ。そしてそのまま私の手から、持っていたメニュー表を奪い取られる。


「あ……」

「サボった分、きっちり働いてあげるわよ。雪守さんはこの後大事なステージがあるんでしょ? ここはもういいから、さっさと行きなさいよ」


 そう言って、しっしっと手で追い払われる。するとそれが合図となったように、他の女子達も次々と後に続く。
 そして何事も無かったように、今の騒動に戸惑っているお客さん達を席に案内して、注文を取り始めた。


「え、ええっと……」

「口は悪いけど、さすがに今回のことはやり過ぎたって反省してるみたいだよ。午後担当のメンバーにも予定より早く入ってもらうから、男子共々休憩しててってさ」

「そうなんだ」


 状況が飲み込めず、戸惑う私に雨美くんが説明してくれる。
 そういうことならば、お言葉に甘えてステージに急いだ方がいいだろう。図らずも生徒会メンバー全員がここにいるが、本来ならば集合予定だった時間を大幅に過ぎてしまっている。


「今の時間って、学校長の挨拶(あいさつ)が始まるくらい?」

「ああ。俺達の出番はその次だけど、学校長は話し出したら止まらない人だから、30分の枠を取ってある。今から行けば余裕だろう」


 九条くんの言葉にホッとして、「よし、じゃあ急ごう」とみんなを見た時だった。


「うわぁぁああ!! みなさん大変ですよぉぉっ!!!」


 さっきまでのシリアスモードはどこへやら。

 保健室から戻って来たらしい木綿先生が、青い顔をしていつもの調子でうるさく騒ぎながら教室へと入って来たのだ。