というか今更気づいたけど、九条くんは今、執事服を着ているんだ。
前は執事っていうよりご主人様っぽいって思ったし、今もそう思っているけど、それでも彼の白銀の髪に黒い燕尾服はとても映えて似合っている。着方も完璧なあたりさすが上位貴族だと、こんな状況なのに場違いにも感心してしまう。
でもそもそも……。
「どうしてここに九条くんが? それにもめん先生も――」
なんでここに? と言いかけた時だった。
「ウウ……」
「ググ……」
「ウガアァァァ!!」
「!?」
突然先ほど九条くんに炎を浴びせらた大柄な男が、そして木綿先生の叱責で大人しくしていた客達が不気味な雄叫びを上げた。
しかも消えていた筈の黒い妖力が再び噴き出すようにして彼らから現れ、男達は一直線に私へと向かって来る。
「――――――!?」
バッとすぐさま九条くんの背に庇われ、そしてすぐに起きた爆発音に、思わず次に上がるであろう悲鳴を想像して、ぎゅっと目を瞑る。
しかし聞こえたのは悲鳴ではなく、よく聞き慣れた声だった。
「そりゃあこんだけ男どもがこぞってここに集まってりゃ、誰だって異変に気づくだろ」
「まぁそれにも気づかないくらい、雪守ちゃんは必死だったってことなんだろうけどね」
「へ……?」
二つの声に私は瞑っていた目を恐る恐る開く。
すると目の前には、雷に打たれたように黒焦げになった上に、水に濡れてビショビショになっている客達がいて。まるで折り重なるような格好で全員倒れて気を失っていた。
どうやらまたも黒い妖力は消えてしまったようだ。
そしてそんな客達の向こうに立っているのは……。
「雨美くん! 夜鳥くん! 二人までなんで!?」
叫んだ私を、夜鳥くんが呆れたように見やった。