「ちょっとちょっと! 一体どうしたの!?」
「それが雪守の接客を目当てにここへ来たのに、オレじゃ詐欺だって……」
「へ……?」
男子の元に駆け寄れば、思いもよらないことを言われ、思わずポカンとする。
なんだそれは? ここは〝執事あんどメイド喫茶〟なのだから、執事が接客したって別に詐欺じゃないだろうが。あ、もしかしてメイドに接客されたかったってこと?
けれど今ここにメイドは私しかいないし、この客入りなのだ。客とはいえ少し空気を読んでほしいのだが……。
「へぇー。君、雪守サンって言うの?」
「名字も可愛いね。名前は?」
「こいつのことは、君が代わりに付きっきりでオレ達の接客をしてくれるなら許すよ」
「は?」
どうやってこの場を収めようかと思案していると、絡むターゲットを男子から私に移したのか、大柄な客達が私を取り囲む。
しかし矢継ぎ早に言われる言葉は、宇宙語かと思うほど、何を言っているのか理解出来ない。
「とりあえずこのままじゃ他のお客様のご迷惑になります。一度廊下に出て話しましょ……」
言って目の前の大柄な男を見上げた瞬間、ぎくりと私の背筋が凍った。
何故ならニヤニヤと下品な笑いをする客達から、見覚えのある黒い妖力が溢れ出していたのだ。
先ほどは無かった筈なのに、どうしてあんなものが……?
「ねー、こっちの接客まだー?」
「メイドさーん」
親衛隊の一件を思い出し、思考が完全に停止してしまった私に、他の客達からもあちこち声が掛かる。どうしよう、早く対処しなくちゃ。
「…………っ」
そう思うのに。あの黒い妖力を見てしまうと体が勝手に震えて、足が固まったまま動かない。
どうしよう、どうしよう。
「――ねえ、聞いてる?」
「!」
あ、と思った瞬間。
黒い妖力をまとった大柄な男が、私に手を伸ばしてきた。
