雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



夜鳥(やとり)くん、何やってんの!?」

「うわぁ、雪守! 折角変装してんだから、マスク取んな!!」

「いや、バレバレだから」

「うるせぇ! 男がクレープなんて買ってたら笑われんだろうが!!」

「いやいやいや……」


 鳥マスクの正体は案の定、生徒会会計、夜鳥雷護(やとりらいご)であった。夜鳥くんはコワモテの三白眼を吊り上げ、鋭い犬歯を見せて威嚇してくるが、赤い顔で片手にクレープを持ったままではちっとも怖くない。
 ていうか笑われるって、鳥マスク姿の方がよっぽど笑われると思うのだが、ツッコんでは野暮だろうか?


「ああっ!? その持っているクレープって、トッピング全部乗せの数量限定品、文化祭スペシャルクレープじゃん!!」

「あ!? なんか文句あっか!?」 

「いや無いけど」


 ……この男、(つう)だ。

 朱音ちゃんもスペシャルクレープに気づいたのか、「わー、全部乗せすごーい」と目をキラキラさせている。うん、可愛い。すると夜鳥くんも朱音ちゃんに反応を見せた。


「あ? あー……、お前もしかして、雪守がすげぇ騒いでた、あの不知火か?」

「はわっ、はい!」

「ふーん……」


 夜鳥くんは意味ありげに、朱音ちゃんをジロジロと見てくる。なんと不躾な。
 この男は良くも悪くも人間には容赦ない。もし朱音ちゃんを傷つけるような言動をするならば、刺し違えてでも止めなければ……!
 そう心に決め、私は奪った鳥マスクをギュッと握りしめた。


「――お前の描いた看板、見た。力強くていい絵だと思う。お前すごいな」

「え?」


 唐突な褒め言葉に、朱音ちゃんがポッと頬を赤らめる。え、何? ロマンス始まった??
 予想外の展開に戸惑う私をよそに、夜鳥くんは「そんだけ」と言うと、私の手から鳥のマスクを奪いとり、さっさとどこかへ行ってしまう。
 なんなんだ、相変わらず自由な男だな。


「……夜鳥さんて怖い人かと思ってたけど、いい人だね」

「う、うん」


 つまり今の行動を推測すると、良くも悪くも能力至上主義の夜鳥くんのお眼鏡に、朱音ちゃんは適ったということなのだろうか?
 ……えーと、色々ツッコみたいことはあるが、とにかくこの一言に尽きる。

 さすが私の朱音ちゃん。