「はぇー……」
私の横に立つ朱音ちゃんがポカンとしている。
そりゃそうだ。私も我が目を疑った。
「あ、そういえば君が噂の不知火朱音ちゃんだね! 雪守ちゃんがずっと可愛い! 天使! って騒いでるからどんな子か気になってたけど、本当にふわふわしてて可愛い子だね」
「えっと、あの……」
「はーい、可愛いからって口説くの禁止ー。朱音ちゃんが困ってるでしょ!」
真っ赤なお好み焼きを顔色ひとつ変えずに頬張りながら、雨美くんが朱音ちゃんを見て軽口を叩いた。それに私はすかさず反応して、朱音ちゃんを自分の背に隠して威嚇する。
しかし当の朱音ちゃんは、雨美くんの軽口よりも彼の味覚異常っぷりの方が気になるらしい。目をまん丸にして、真っ赤なお好み焼きが雨美くんの口に次々と吸い込まれていくのをずっと凝視していた。
「じゃあ午後にステージでね。引き続き受付頑張れ」
とにかく目的の差し入れも出来たので、朱音ちゃんを引っ張り足早に雨美くんの元を去る。あんな真っ赤なお好み焼きをずっと見ているのは、精神衛生上よろしくない。
というかあんな辛そうなものを見てしまうと……。
「……なんだかわたし、甘いもの食べたくなってきちゃった」
「私も」
真剣な顔で言う朱音ちゃんが可愛くて、吹き出しそうになりながら私も同意した。
やっぱり私達は似ているみたいだ。