◇

 
「――で、お前達はここで一体何をしている?」


 観覧車の出口。そこで腕を組んで目の前の5人組に問うと、慌てたように彼らは言い訳を始めた。


「いや違うんですよ、九条様! 不知火(しらぬい)が九条様に遊園地のチケットを渡したから、様子を見に行こうって言い出して!」

「あ、夜鳥さんズルい! 元は夜鳥さんが言い出しっぺの癖に!」

「僕は皇女殿下の護衛ですからね! 仕事をしたまでですよ!」

「とか言って、二人と一緒にアトラクションに乗ろうって言ったの、先生じゃん! もうボク、今日は一生分吐いた気がするぅ!」

「それそれ! アンタら涼しい顔してずっと絶叫系乗ってって、マジでどうなってんの!? ついこの間死ぬか生きるかのスリル味わったばかりなのに、まだ物足りない訳!?」

「お前ら……」


 やはりというか、奇妙な集団の正体は朱音達だったようだ。
 尾行までしておいて、それぞれ勝手なことを素知らぬ顔で話す彼らに、頭が痛くなる。

 というか、だとしたら……。


「なら最初の写真の女もお前なのか、朱音」

「あ、バレました? わたしもあれからレベルアップして、かなり上手く化られたと思ったんですけどね」

「あのなぁ……」


 ペロッと舌を出して言う朱音に脱力する。
 かつて俺をこっそりと眺めているだけだった少女が、実はこんなとんでもない策略家とは。未だに驚きしかない。


「うふふ、雨美さんのカメラを借りたんです。二人の思い出の為に練習したんですよ。よく撮れてましたでしょ?」

「まぁ、それは……」


 確かに出来上がりについては満足したが、だからといってずっと()けて来ることはないだろう。

 そもそも遊園地に誘ったのが朱音の入れ知恵だと、まふゆにバレてしまった。
 デートの場所すら自分で決められない男だなんて、まふゆはどう思っただろうか?

 まさか呆れて別れるなんて言われでもしたら……!


「…………」


 頭の中を嫌な予感がぐるぐると駆け巡るのを感じながら、俺はそっと隣のまふゆを伺った。

 すると――。