「? どうしたんだい?」
「えっと、その……、体調はどう? 具合悪いとことかない?」
「ああ」
それは以前までなら、よく尋ねられた質問。
でも今となっては聞くまでもない問いに、なんだかおかしくなってしまう。
「もちろん大丈夫だよ。まふゆが使ってくれた全能術のお陰でピンピンしてる。念の為医者にも診てもらったけど、どこも悪いところは無いって言われただろ?」
「そうだけど……。九条くんって辛くても我慢するから、信用ないっていうか……」
「はは」
確かに以前は数え切れないくらい発作を起こしてたから、その度にまふゆを呼ぶのは申し訳ないと思っていた。だから調子を崩して、まふゆを悲しませることもしばしば。
当時のそんな行いが、まさかこんな形で返ってくるとは。
嘘じゃなく、今は本当に元気なのに。
「じゃあ〝辛い〟って言ったら、まふゆが癒してくれる?」
「え……?」
俺の言葉にまふゆは驚いたように目を見開いて、そして首をゆっくりと横に振った。
「それは無理だよ。だって私にはもう妖力は……、癒しの力は……」
「そうかな?」
言って俺は向かいの席に座るまふゆを抱きしめる。俺より一回り小さく滑らかな白い手に触れると、ピクリとその指先が反応した。
「まふゆは今も変わらず俺を癒してくれるよ。だって俺にとっては君の存在こそが、最高の癒しそのものなんだから――」
撫でていた手をぎゅっと握ると、やはりまふゆは握り返してくれる。
それにどうしようもないくらいの喜びを感じながら、俺はまふゆの唇に己の唇を近づけた。
「…………」
しかしそこで窓の外から強い視線を感じ、チラリとそちらへと目をやる。するとやはり、あの怪しい集団も観覧車に乗っているのが見えた。
どうやら彼らは俺達の次のゴンドラに乗り込んだらしい。
「……まふゆ、身を屈めて」
「? 九条く……」
呟くように小さく囁いて、まふゆが身を屈めた瞬間、今度こそ俺は、自身の唇をまふゆの唇に重ねた。
「…………どうしたの?」
キスの後、まふゆがキョトンと首を傾げるので、俺は笑う。
「観覧車を降りたら、ちょっと出口で待とうか」
窓の外はもうとっぷりと暗い。ネタバラシにはちょうどいい頃合いだろう。
