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「はぁーーっ!! 楽しかったぁ!!」
「そうだね」
乗り物に乗り終えて出口から出た俺は、興奮したように先ほどの乗り物について語るまふゆを微笑ましく見ていた。
「じぇっとこーすたー? って、いうんだよね? 怖いのかなって思ってたけど、すっごく面白かったぁ!! 滝つぼに落ちる瞬間なんて、両手上げてはしゃいじゃったよ!」
「怖さで言うなら、木綿先生の背中に乗る方がよっぽど怖いかもね」
「あー言えてる! しかもあっちはめちゃくちゃ揺れるから、気持ち悪くなるし!」
「……けど、それにしても結構濡れたな」
滝つぼに落ちたのだから無理もないが、せっかくの可愛い姿が台無しだ。
取り出したハンカチでまふゆの長い髪を拭うと、「ありがとう」と彼女は微笑む。
「……」
濡れた紫の髪がなめらかな頬に張り付いて、いつもよりほんの少し煽情的だ。自然と視線が吸い寄せられ、〝このままずっとまふゆを見ていたい〟そんな気持ちが俺の中で溢れていく。
――しかし次の瞬間、そんな俺の気持ちは見事に全部吹っ飛んでしまった。
「うぷっ」
「おぇ」
不快なえずく声。
見れば俺達よりほんの少し離れた場所に、全員目深に帽子を被り、マスクにサングラス姿の奇妙な5人組の集団が体を丸めてえづいている。
もしかしてあの集団も今の乗り物に乗って、乗り物酔いでもしたのだろうか?
最初に出会ったカメラ女といい、やたら怪しい人物が目につく。
まさか皇女の正体を嗅ぎつけた奴らが、遊園地内を闊歩しているのだろうか?
