雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



 ◇


「わぁーーっ! 可愛いーーっ! モフモフだぁーーっ!!」


 チケットを受付に渡して園内に入場するなり、まふゆは一目散に駆け出した。目当てはもちろん、来場客を出迎えていたクマとウサギの着ぐるみだ。
 そしてそのまま抱き着くのかと思いきや、控え目に着ぐるみの体を撫でて、幸せそうに頬を緩めている。


「九条くんもおいでよー! モッフモフだよー!」


 着ぐるみには興味は無いが、まふゆの弾けんばかりの笑顔に引き寄せられるように近づくと、俺の手を取ったまふゆが着ぐるみの体へと触れさせた。


「ねっ? ふわふわで気持ちいでしょー?」

「あ、ああ……」


 正直人工的な着ぐるみの毛並みより、まふゆの少しひんやりとした柔らかな手の方がよほど気持ちいい。
 ……なんて。言ったら引かれそうだから、絶対に口にしないが。


「モフモフふわふわ。幸せー」


 当のまふゆは着ぐるみに夢中で、俺の心境など気にもしていないようだ。
 そのまま彼女の気の済むまで撫でさせてあげよう。


「あの、すみませーん……」

「!」


 するとその時、カメラを持った見た目20代くらいの女性が一人、俺達に声を掛けてきた。
 それにまふゆが慌てたように着ぐるみから離れる。


「あっ、すみません! すっかりこの子達独占しちゃってました! もう十分堪能したんで、お次どうぞ!」

「えっ。いえいえ、違うんです! そうじゃなくて、その……。図々しいお願いなんですが、お二人のことを撮らせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「え?」


 てっきり着ぐるみと撮りたいのかと思ったら、俺とまふゆを撮りたいらしい。何故?


「お二人を見て、素敵なカップルだなーと思いまして……」

「…………」


 怪しい。

 いくら良く見えたとしても、わざわざ他人の写真なんて撮りたいものだろうか? まさかこの女、まふゆが皇族だと知る新聞記者だろうか? 

 であれば、写真を撮らせるのはよくない。
 しかし下手に断って隠し撮りでもされたら?

 警戒しながら、俺がどう答えるべきか悩んでいると……。