「ふふふ。私の正体を見破るとは、さすがでございます、神琴様。……朱音はもう少し修業が必要なようですがね」
「ううう……。だってまさか分かりませんよぉ、暗部長が変化してたなんて。妖術の気配も全く感じなかったし……」
「ふふ」
しゅんとする朱音ちゃんに三日月さんはゆったりと微笑み、そして九条くんを見る。
「暗部長が私だと、どの段階でお気づきになられたのですか?」
「……いなり寿司を見てすぐ。葛の葉は暗部と俺を接触させるような命令は絶対に与えない。また他の暗部達が葛の葉にとって不利になりえることを漏らすはずもない。とすれば、葛の葉に最も近しく、それでいて葛の葉を妄信している訳でもない、そんな貴女以外には考えられなかった」
九条くんが真っ直ぐに三日月さんを見つめて告げると、彼女は「その通りでございます」と頷く。
「差し入れは私の独断。姫様は復讐の機会をずっと伺っており、どのような手段に出るか分かりませんでした。だから被害を最小限に抑え込む為、体育祭を利用したのです。私は皇帝陛下方と随分と前からこの時に向けて、話し合いをしておりました」
「そ、そんなことが……」
だから今年は皇帝陛下が来賓になったし、ずっとティダから出なかったお母さんも帝都に来た。
『九条くんのこと。楽観的なことは何も言えないけど、でも今日でなんらかの決着は着けるから。だからもう少しだけ待ってて』
お母さんが貴賓室で言った意味深な言葉の意味。そういうことだったんだ……。
