「やります。秘術や妖力が使えなくなっても、私はそれまで無縁の生活をしてきたんだから、きっと大丈夫」
「まふゆ……」
「それにね、」
私は陛下を見上げて、にっこりと笑った。
「お父さんだって、秘術が使えなくなるからって、お母さんに全能術を使うのを躊躇しなかったんでしょ? 私もそれと同じなんだよ」
「……!」
そう告げた瞬間、陛下は驚いたように言葉に詰まり、そして破顔した。
「っは、はははははっ!!」
これまでずっと暗い表情をしていたのが、まるで嘘のように。
「……そうだな。その豪胆さ、さすが私と風花の娘だ。よかろう、皇族に伝わる一子相伝の秘術、そなたに授ける」
「はいっ!!」
「まふゆ……、そなた……」
葛の葉さんが私を見て、信じられないというように目を見開く。
その金色の瞳は紛れもなく九条くんと同じもので、泣き出しそうになるのを必死で堪えながら私は笑う。
「知らなかったとはいえ、葛の葉さんには色々酷いこと言ってすみませんでした。私、妖怪としての矜持を捨ててでも九条くんの成長を見守ることを選んだあなたの気持ち、とっても良く分かるの。だって私も同じくらい、九条くんが大切で大好きだから……!」
「……っ」
思いのままを告げると、葛の葉さんがまたポロポロと涙をこぼし、そして微かに頷いた。
小さく聞こえた「ありがとう」は、きっと空耳じゃないのだろう。
「まふゆ……、少し耳を貸してもらってもいいだろうか?」
「へ?」
陛下に向き直ると、開口一番そう言われて、私は目を丸くする。
一子相伝だというから緊張していたのに、まさかの内緒話での口伝だなんて……。
まぁ皇族の秘密に関わることだし、あまり周りには聞かれたくないのかも知れない。
そう結論づけて、私は陛下の口元に耳を近づけた。