雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



「やはり全能術はあったのじゃ!! それを力が無いなどと、何度(わらわ)を愚弄すれば気が済む!! その術さえあれば、紫蘭も、神琴も……!! ぐっ、」

「姫様っ!!」


 はぁはぁと息を荒げたまま、葛の葉さんが膝から崩れ落ち、それに三日月さんが背中をさする。


「姫様。これ以上妖術を使うのは、お体に障ります。どうか気をお鎮めください」

「……っ、今更体など労わってどうする!? 妾にはもう何も無い! 夫も息子も、一族だって、何もかも……!!」


 崩れ落ちた姿勢のまま、小さな体を震わせる葛の葉さん。
 その額にはびっしりと汗が浮かんでおり、やはり九条くんの言った通り、常に妖力を温存する必要のある無理の出来ない体なのだろう。


「……葛の葉」


 そんな彼女の元に、お母さんが進み出る。


「ねぇ、葛の葉……」

「…………」


 お母さんの呼びかけに、葛の葉さんは何も答えない。
 それでもお母さんは、彼女の前で膝をついて頭を下げた。


「ごめんなさい。決してわたし達は、葛の葉を愚弄するつもりなんてなかったの」


 語る声は震えている。 
 こんな弱々しい様子のお母さんは初めて見た。


「わたしが大馬鹿だった。全能術を使うには〝条件〟がある。それを知らないままに、紫蘭を治せるって浮かれて、あの時わたしは葛の葉に術のことを伝えてしまった……」

「え……、なんなの? 〝条件〟って?」


 てっきり皇族なら、誰でも全能術が使えるものだと思っていたのに。新たな情報につい口を挟んでしまう。


「――全能術を使えるのは、ただ一度きり。〝生涯を誓った、最も愛する者〟にしか使えないのだ」

「え、」


 それが〝条件〟!?

 驚いて陛下を見れば、彼は悔やむように手で顔を覆った。


「叶うならば、私だって紫蘭を救いたかった! 当たり前ではないか、あいつは私のかけがえのない友なのだ! 使えるものならば、葛の葉に言われるまでもなく、とっくに使っていた……!」

「そんな……そんなの……」

「じゃあどの道、雪守ちゃんでも……」

「銀髪は……」

「…………」


 みんなが一様に愕然とした様子で俯く。
 けれど私の中で巻き起こった感情は()だった。

 だって今の言葉で確信したのだ。

私は(・・)九条くんを(・・・・・)救える(・・・)〟って……!!


「お願いです、皇帝陛下! 私に全能術を教えてください!」


 もう一度願い出る私に、陛下は暗く首を振る。


「今の話を聞いていたであろう? 術の発動条件は、〝生涯を誓った最も愛する者〟だ。だからそなたには……」

「――誓い合った(・・・・・)もの(・・)、私達」

「……え?」


 私の言葉に、みんながポカンとする。
 その反応も無理もないが、けれど今一度思い出してほしい。

 借り物競走での一幕を――……。