「妾がこんな情けない妖狐もどきの姿になってまで生き延びようとしたのは、お前が生きている姿を見ていたかったからだ!! なのに何故、こんなにも早くお前が死なねばならぬ!? 何故っ、何故っ……」
「葛の葉……」
「ああっ、わああああああっ!!!」
「……っ」
葛の葉さんの慟哭。
それに胸がえぐられるような痛みを感じながら、私は握りしめたままだった九条くんの冷たい手を更に強く握る。
そして思うのは、気持ちを伝えてくれた時の彼の言葉――。
『まふゆ、俺は君が好きだ。ずっと、ずっと前から。永遠なんて言わない。だけど許されるのなら、俺はこの生を全うするその時まで、君の側にいたい』
生を全う? ううん、まだ終わってないよ。
九条くんは生を全うなんて、全然していない。
『バカバカ! そんなの私だっておんなじだよ! ずっと九条くんの側にいたい! 病気だからって関係ない! この先何があったって、私は九条くんの隣にいる……!!』
――そう。
ずっと一緒にいるって。絶対幸せにするって。あの時私は決めたの。
なのにまだ、なんにも叶えられていないよ。九条くん。
だから……。
ここで諦める訳には、絶対にいかないっ!!!
「……皇帝陛下っ!!」
「!」
呼ぶと陛下は驚いたように私を見た。
それに対して私も、陛下の黒い瞳を真っ直ぐに見つめる。
「葛の葉さんがさっき言った、皇族に伝わる全能術は〝一子相伝〟であるって話。それに間違いはないんですか?」
射抜くように問うと、陛下は少し戸惑った様子で頷いた。
「あ、ああ……。それは確かだ。だがなまふゆ、全能術は本当に私には……」
「――なら、私が使います」
「…………何?」
瞬間、陛下が虚を突かれたように固まった。
確かに突拍子もないことを言っているように聞こえるのだろう。
でも私が〝皇帝の娘〟であるのなら、きっと私にだって全能術を使う適性はあるはず。
ならここで引く訳には、絶対にいかない。
九条くんを救うことが出来る可能性が、ひと欠片でもあるのなら――。