「いやぁぁぁぁぁぁっ!! 神琴ーーーーっ!!!」


 九条くんの体から急速に失われた体温。
 固く閉ざされた瞳に、葛の葉さんの悲鳴が響き渡る。


「まふゆっ!!」

「どうしました!? 今の悲鳴は……!?」

「お、お母さ! 先生!! えっ、それにみんなまでっ!?」


 悲鳴を聞きつけ、保健室へと入って来た、お母さんと木綿先生。
 更にその後ろから現れた朱音ちゃん達に、私は驚きに目を見開いた。


「暗部達を一掃出来たから、暗部長の転移の術で戻ってきたの!!」

「全員気絶して夢の中だから、安心してよ」

「それよりそっちはどうなってんの? さっきの悲鳴は……」


 そこで全員の視線が、悲鳴の発生源へと向けられる。
 そしてベッドに横たわる九条くんの姿が目に入った瞬間、全員がまるで凍りついたように体を固まらせた。


「神琴!! 神琴っ!! う、……あああっ!!!」

「ひ、姫様……」


 狐面をつけ、変化(へんげ)したままの三日月さんが、九条くんに(すが)りついて泣き崩れる葛の葉さんに駆け寄る。


「嘘……。こんなの、嘘だよね……?」

「おいっ! 不知火(しらぬい)っ!!」


 更に朱音ちゃんは顔色を一気に悪くして倒れ込み、それを夜鳥くんがすぐさま手を伸ばして支えた。


「寝てる……だけだよな?」

「そう思いたい、けど……」


 他のみんなも現実を受け止め切れないというように、その場に立ちすくむ。


「神琴!! みことぉぉっ!!!」


 誰も声を出せない。
 室内にはただただ、葛の葉さんの泣き叫ぶ声だけが響いた。