『へぇー。やっぱり雪守さんって、なんでも要領よくこなすよね』

『なんかいつも澄ましてて、余裕っていうか』

『さすが神琴さまのお気に入りって感じ?』

『いや、私と九条くんは別に……』


 もう少し上手く立ち回れていれば、誤解を解いて仲良くなれたかも知れないのに。結局なんだかますます(こじ)れた形になってしまった。


『アンタナンカガイナケレバ』


 もう親衛隊のようなことは二度と起こしたくない。
 次チャンスが来たら、ちゃんと歩み寄れるように頑張らないと!

 そんな訳でクラスの女子達との溝は深まるばかりだが、私は決してぼっちではない。
 繰り返す、私はぼっちではない。


 何故なら私には――。


「まふゆちゃーん! お疲れ様! 差し入れ買ってきたよ!」

「うわぁん! 朱音(あかね)ちゃん、マジ天使!!」


 ――そう、私の天使こと、不知火朱音(しらぬいあかね)ちゃんがいるのである。

 バタバタと舞い込んで来たトラブルを解決して回り、再びステージ裏に戻ったところを呼び止められた。どうやら朱音ちゃんは私が来るのを待っていてくれたようである。
 ステージ裏の簡易的な休憩スペースに移動すれば、買って来てくれたものを次々と並べてくれた。


「たこ焼きにー、焼きそばにー。あとパンケーキも焼いていたから、買って来ちゃった。まふゆちゃんは甘いもの平気?」

「むしろ甘いの大好き!! ありがとう朱音ちゃん!!」


 どれも熱々だが、私の朱音ちゃん愛の前にはこれしきの熱さなど些細なことだ。美味しい美味しいとパクつけば、ニコニコ微笑んでくれる。

 ああ守りたい、この笑顔。