「……貴女は事故の代償に、多くの妖力を失った。だから残された微かな妖力を温存する為、子どもの姿に化けている。違いますか?」
「…………」
「教えてください。どうして俺の記憶を奪った? しかも記憶の無い俺に〝義理の母〟だなんて。そんな嘘を、何故……」
「ほほほ、そんなもの……」
九条くんの言葉にコロコロと笑う九条葛の葉。
だがその口元に、つーっと一筋の涙が流れ、私は目を見開いた。
「……そんなもの、いくら事故と言い張っても、人の噂に戸は立てられぬ。黒い噂が尽きぬ血で汚れた当主の実の息子になど、させられぬではないか。そなたはこれから新しい九条家の当主となるのだから」
「――――」
「葛の葉、さん……」
すべては九条くんを守る為に。
あまりに壮絶な話に言葉を失っていると、不意に九条くんが葛の葉さんに向かって手を伸ばした。
そしてそのまま、彼女から目元を覆っていたレースをするりと取り去る。
「え……」
「やっぱり」
露わになったのは、九条くんによく似た金色の瞳。
それに九条くんは優しく微笑んだ。
「お父さまは昔、俺の瞳はお母さまと同じ色で綺麗だとよく褒めてくれました。お母さまもよく言っていましたね。〝顔は父親似だけど、目は妾にそっくりだ〟って。だからずっと隠していたんですね」
「み、こと、神琴……」
隠すものが無くなった葛の葉さんの金色の瞳からは、ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちた。
