「紫蘭が亡くなり、初七日も過ぎぬ内に奴らは妾に再婚しろと言ったのじゃ。しかもその相手というのが……、……」
「?」
まるで口に出すのを躊躇うように、何度も言い淀む九条葛の葉。
それに私が不思議に思っていると、皇帝陛下が首を横に振った。
「妖狐一族は何より〝純血〟を重んじる一族。それは皇族のしきたりの比ではない、か……」
「え? 純血……??」
意味が分からず目を瞬かせると、九条葛の葉がくだらないと言ったように鼻で笑う。
「はっ、心底バカらしいじゃろ? じゃが妖狐一族は代々〝本家の血〟を守ることに心血を注いできた。歴史の中では本当に兄妹や親子で夫婦になった者も居たらしいの」
「……っ!?」
あまりにもおぞましい話だ。
というかじゃあ、九条葛の葉が勧められた再婚相手っていうのは、まさか――……。
『はい。あの真っ暗に閉ざされた九条家で、紫蘭様は姫様にとっての唯一の光でしたから』
三日月さんが言った〝真っ暗な九条家〟の真意。
その言葉の一端が、今少しだけ分かったような気がする……。
「原因不明などではない。近親で繰り返される婚姻。その果てに蔓延したのが、忌まわしき〝奇病〟なのじゃ」
「あ……」
「矛先が妾の向くだけならば別によかった。だが奴らは言ったのじゃ。〝神琴も紫蘭のようにすぐに死ぬ。ならば一人でも多く、本家の血を継ぐ者を増やせ〟――と」
「!」
それはあまりにも九条くんを軽んじる酷い言葉。
九条葛の葉もきっとそう思ったのだろう。彼女は静かに怒りを滾らせて言った。
「神琴にまで〝一族の闇〟が降りかかるのは、どうしても許せなかった。だから妾は――」
「本家の者達を葬り去り……、それにまつわる全ての記憶を俺から封じた……ですね」
「! 九条くん……!」
ゼェゼェと息を荒げながらも、九条葛の葉の言葉に答える九条くん。
それに私は慌てて握った手に氷の妖力を込めた。
