「――そういうことか」
「?」
するとそれまで黙っていた皇帝陛下がようやく口を開き、九条葛の葉を見て、重く溜息をついた。
「そなたの〝その姿〟の理由。そして子息に対して〝義理の母〟と偽った理由。全ては九条家で起こった、あの痛ましい事故から彼を守る為か」
「事故? 九条くんが小さい頃に、何かあったんですか?」
私が尋ねると、陛下は頷く。
「ああ、そうだ。……今から13年前、紫蘭が亡くなったのと時を同じくして、もう一つの悲劇が九条家で起こった」
「もう一つの、悲劇……?」
一体何が起きたというのだろう?
ごくりと唾を飲み込んで続きを待ち、そして次に出た陛下の言葉に私は固まった。
「九条家本家の者達が全て死んだのだ。……葛の葉と、彼女の子息を残して全てな」
「え……」
本家の者達が残らず死んだ? 九条葛の葉と九条くん以外、全員が……?
「それが……〝事故〟?」
「表向きにはな。実際には、この妾が残らず葬り去ったのじゃが」
「!?」
コロコロと、まるで鈴が転がるような美しい笑い声が保健室に響く。
『そして姫様の憎悪はお二人だけに留まらず、紫蘭様、ひいては妖狐一族全体にまで及びました』
まさかあの言葉が13年前の事故に繋がっているの……?
ヒュッと息を呑むが、それでも私は九条葛の葉に問いかける。
「どうして、そんなことを……?」
「…………」
私が尋ねた瞬間、九条葛の葉の顔から笑みが消える。
そしてややあった後、ポツポツと語り始めた。