雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



 ◇


 学校には先生の宣言通り、すぐに辿り着いた。
 しかし地上を見下ろすと校門前にはおびただしい数の人で溢れ、ざわざわと騒がしい。
 しかもその渦中には学校長が居て、何かを叫んでいる。


「学校長はともかく、他の人達は学校関係者じゃないですよね?」

「ええ、皇宮護衛官に新聞記者。それに騒ぎを聞きつけた野次馬ってところですね。九条家のご当主が現れた後、体育祭はすぐさま中止。生徒達は家に帰しましたが、皇帝陛下の御前であのようなことが起きたのです。もはやこの騒動は帝都中の知るところとなっています」

「帝都中……」


 想像以上に大騒ぎになっていたことに不安を覚えるが、しかし今は周りのことなど気にしている場合じゃない。


「急ぎましょう! 倒れた九条くんは保健室に運ばれました。恐らく今も陛下達はそこに……!」

「はい……!」


 校舎内に入ると、一反木綿から人間の姿に戻った木綿先生と共に、私は保健室を目指して廊下を走る。


「あっ! まふゆ! 先生も!」

「お母さんっ!!」


 すると保健室の前にお母さんと皇帝陛下がいるのを見つけ、私は慌てて駆け寄った。


「まふゆ。よかったわ、無事で……」

「お母さんこそ、腕は……?」


 チラリと視線をお母さんの腕へと向けると、既に応急処置をされた後なのか、包帯が巻かれている。
 それにぎゅっと顔を(ゆが)めると、お母さんは固かった表情を緩めた。


「わたしはこの通りただのかすり傷だし、平気よ。大変なのは……」

「…………」


 言葉を切り、お母さんの視線が保健室へと向かう。
 この中に居るのは間違いなく……。


「……九条くん」


 私は突き動かされるように、保健室の扉へと手を伸ばす。


 ――しかし、


「待ちなさい、まふゆ」

「!」


 一人の人物によって、それは制されてしまう。


「皇帝陛下……」


 止めたのはつい先ほど、私のお父さんだと知ってしまった人物。
 まるで全てを見透かすような漆黒の瞳。
 それが今はなんとなく気まずくて目を逸らすと、陛下が私の前に進み出て、スッと扉に手をかけた。


「……え?」

「中には葛の葉が居る。そなたを一人にする訳にはいかない。私の後ろから着いてきなさい」

「……はい」

「陛下、万が一の時は僕も中に突入します」

「ああ、頼む」


 陛下に(ひざまず)く木綿先生を見て、〝本当に先生は皇宮護衛官なんだなぁ〟と、つい場違いな感想を抱く。

 そして着ている羽織を(ひるがえ)して保健室へと入った陛下に続いて、私も緊張しながらも保健室の中に足を踏み入れた。