「!?!?!?」

「ま、妖獣姿だし、ノーカンだろ」

「ふぇっ!?」

「九条様には悪いけど、これぐらいのご褒美はないとね。ボク達だって頑張ったんだし」

「なっ、なな、なっ……!?」


 あまりのことに二の句が継げず、真っ赤になって口をパクパク動かす。


 ――しかし、


「皇女だっ!! 拘束しろっ!!」 


 どうやら動揺している時間は無いらしい。
 閑散とした屋敷のどこに居たのかと思うほど、たくさんの暗部がワラワラとこちらへと走って来る。


「そうはいかないんだから!! みんな、行きますよっ!!」

「了解!!」

「腕が鳴るね!!」

「何人来ても、倒してやるぜ!!」

「!? ちょっ、みんな!?」


 朱音ちゃんとカイリちゃん、夜鳥くんと雨美くんが暗部達の前に躍り出る。
 それに私が止めようと叫ぶと、朱音ちゃんがこちらを振り返って笑った。


「キリがないから、まふゆちゃんは先に神琴様の元へ行って! わたしは暗部長達みたいな転移の術は使えないから、こんな形でしかまふゆちゃんの道を拓けないけど……。でも絶対に暗部はここで食い止めるから!!」

「朱音ちゃん……」

「雪守さん! 僕に乗ってくださいっ!! 超高速で学校に戻ります!!」

「……っ、はいっ!!」


 みんなに促され、弾かれたように私は一反木綿姿になった木綿先生の背中に乗る。
 するとそんな私達の前に来て、宰相さんが言った。


疾風(はやて)。皇女殿下のこと、くれぐれも頼んだぞ」

「えっ! 宰相さんは来ないんですか!?」


 驚いて叫ぶと、宰相さんはこくりと頷く。


「私は彼らと共にここに残る。子ども達だけ置いていく訳にはいきませんからな。それに暗部が葛の葉殿と合流されても厄介だ。ここで全て叩く。さぁ、いいから早く行け!」

「……分かりました! 必ず皇女殿下を、陛下と九条くんの元へお連れします!!」

「ありがとうございます、宰相さん!」


 お礼を言うのと同時に浮上し、ぐんぐんとみんなの姿が小さくなくなっていく。

 それを見つめながらも思うのは、もちろん九条くんのこと。
 私は首にかけたホタル石のネックレスをぎゅっと握り締め、決意を新たにする。

 九条くん、今すぐ行くから待っててね……!!