「レディースエーンドジェントルメーン!! お待たせしました!! これより、第108回日ノ本高等学校(ひのもとこうとうがっこう)文化祭が始まりまーすっ!!!」


 ステージの軽快な司会に合わせて、準備しておいた色とりどりの紙吹雪や風船を風の妖力で発射させる。すると観客席からは大歓声が巻き起こった。
 それに「よし、つかみはバッチリ!」と、私はグッと拳を握る。

 さぁ今日は何の日か、もうお気づきですね?
 涙なしには語れない準備に準備に準備の末、やっと、やぁっと! 文化祭の本番を迎えることが出来ましたぁーっ!!
 わぁー頑張った私! よくやった私!!

 ちなみに今私は、ステージ裏から司会に合図を出しながら、音響担当と演出担当にも指示を出しているところである。練習の甲斐もあって進行はスムーズだし、客の盛り上がりも上々。これならステージについては私がいなくても問題ないだろう。

 さて次は――。


「雪守さーん! 3年1組の調理器具が故障かもだから、見に来てほしいって!」

「了解! 今行く!」

「雪守さん! うちの生徒が他校生と揉めているって!」

「分かった! 場所はどこ?」
 

 予想通り進行状況のチェックに、各模擬店の見回り、そして治安の維持。生徒会の仕事は尽きることが無い。更にその合間にもトラブルは次々と飛び込んでくる。
 先の九条くん親衛隊が起こした事件の影響で、文化祭実行委員の人数も当初の予定の半分ほどで動く結果になってしまったこともあり、やることは山積み、大変に忙しい。
 一応生徒会メンバーの分もクラスの喫茶店用の衣装を縫ったのだが、やはり使う機会は無さそうだ。

 そうそう。喫茶店用の衣装といえば、夜鳥くんにはああ言われたが、やはり頼まれた以上やり遂げないのは性に合わないので、結局私一人でクラス30人全員分の衣装を仕上げてしまった。


『えっ!? 雪守さん、本当に一人でクラス全員の分、縫ったの!?』


 正直半ば意地になっていた感は否めない。
 出来上がった衣装をクラスで見せた時、女子達がポカンとした後に、気まずそうに互いの顔を見合わせていたのを見て、やり方を間違えたのだとようやく私は悟った。