「先生はお母さんのことも夏休み前から知ってたの?」
「もちろんです。ただ皇后陛下自身には僕のことは伝えていなかったんですが、さすが勘の鋭い方です。酔い潰されて、すっかり白状させられちゃいましたよ」
「え゛」
たははと笑う先生に、私は愕然とする。
お母さんがよく先生を飲みに誘ってた理由って、そういうこと!?
てっきり与太話でもしているのかと思ってたら、そんな真面目な話をしていたんだ!?
けどそうなると、気になることがひとつあるような……。
「先生が〝私の護衛〟だっていうなら、なんで私が九条家に行くって言った時、止めなかったんですか?」
最初は九条家の事情は知らなくていいことと言っていた先生が、最後には九条くん奪還に協力してくれた。
私としては助かったけれど、護衛としてはマズい行動な気がするが……?
するとそう思ったのは私だけではないようで、宰相さんが口を挟んできた。
「それについては私からも理由を聞きたいな。疾風、お前の任務は皇女殿下をお護りすること。にもかかわらず、何故殿下を九条家へと行かせた? 葛の葉殿は陛下と風花殿を憎んでいる。万が一のことも考えられたのだぞ」
「いやぁ……」
威圧するような宰相さんの言葉に、木綿先生は困ったようにポリポリと頬を掻く。
そして「うーん」と腕を組んで言った。
「理由というほどハッキリしたものではないですが、しいて言うなら〝予感〟でしょうかねぇ……」
「予感?」
「陛下は親友を救えなかったことを今も悔いている。だからせめて彼が残した忘れ形見だけは助けたい。僕はあの日、生徒会室に来ない九条くんを見て、それを叶える千載一遇のチャンスだと思った訳なんですよ」
「? 一体なんの話をしている? お前の話は回りくどくて分かりにくい」
イライラとした様子で宰相さんが先生を睨む。
その気持ちも分かるが、しかし私には先生が言わんとすることがなんとなく分かった。
『雪守さんっ! お願いします!! 頼れるのは君しかいないんですっ! 九条くんとなんとか接触して、文化祭の挨拶と生徒会への参加の約束を取りつけて来てくださいっ!!』
確かにあの日、私に九条くんを呼びに保健室に行くよう言ったのは、他ならぬ木綿先生だったのだから――。
