「お前はまた何を子ども達をこんな危険な場所に連れて来とるか!! あれほど一人で来いと言ったであろう!! 仮にも今のお前は教師だというのに、午前の飲酒のことといい、本当に学校長殿の言う通り弛んどるんじゃないのか!?」
「ひええ!! 滅相もないです、正宗様ぁ!! 僕だって連れていけないって、ちゃんと言ったんですよぉ!! でもみんな雪守さんが心配だって聞かなくてぇ……!!」
「それを宥めるのが大人の役目であろう!! ……全く。こんなのが史上最年少で皇宮護衛官に入隊した天才とは、世も末だな」
「あはは、恐縮です」
「え?」
思いがけない言葉が聞こえ、私は二人に抱き着いていた腕を下ろして、木綿先生を見つめる。
すると先生もこちらを見ており、目が合うなりスッと私の前へと歩み出た。
「〝皇宮護衛官って何〟? って顔してますね、雪守さん」
「っ」
図星を指されてぐっと言葉に詰まると、木綿先生が柔和に笑って跪いた。
先ほどの宰相さんとまったく同じ仕草に、ドキリと私の胸が跳ねる。
「皇宮護衛官とは、皇族方をお護りする者のこと。雪守さん。いいえ、皇女殿下。長らく貴女を欺き、大変申し訳ありませんでした。僕の本来の職務は教師ではなく、皇女殿下の護衛です。貴女が一年生の頃より、陰ながら見守らせて頂いておりました」
「一年生って……、じゃあ私が高校入学した時から?」
「はい。陛下の命で帝都に参られる皇女殿下を見守り、必要に応じて手助けするよう言われておりました」
「そう、だったんですね……」
まさか木綿先生まで皇帝陛下と繋がりがあったなんて……。
でも思い返してみれば、不自然なところはいくつもあった。
いくら生徒会の顧問だからって、普通夏休みの間ずっと生徒と行動を共にするものだろうか?
そういえばお母さんとも妙に仲が良かったような……?