「木綿先生に朱音ちゃんにカイリちゃんまで!? ど、どうして……!」


 とんでもない状況で現れた三人に口をパクパクさせて叫ぶと、それを見た朱音ちゃんがホロホロと涙を流し始め、私はギクリと背筋をこわばらせる。


「あ、朱音ちゃ……」

「どうしたもこうしたもないよっ!! 葛の葉様が現れて、風花さんと神琴様があんなことになって、その上まふゆちゃんまで消えちゃったんだもん!! 心配で心配で、居ても立っても居られなかったよ!!」

「あ……」

「九条家が色々あることはアンタらから聞いてたけど、まさか三大名門貴族の当主があんな騒ぎ起こすなんて、夢にも思わなかったよ。とにかくまふゆが無事でよかった」

「カイリちゃん……」


 静かに涙を流す朱音ちゃんと、その後ろからホッとしたように息をつくカイリちゃん。
 二人の体は汗ばんでいて、本当に急いで駆けつけてくれたのだということが分かる。


「ごめんね、心配掛けて……!」

「わ」

「お、おい」


 思わず二人にぎゅっと抱きつくと、朱音ちゃんは嬉しそうに、カイリちゃんは困ったように抱きしめ返してくれた。


「ありがとう、来てくれて」

「まふゆちゃんのピンチなんだもん! 当然だよっ!」

「ま、〝友達〟……だしな」

「うん……」


 両腕に感じる柔らかな温もりに、ずっと張り詰めていた心が(ほど)けていくのを感じる。
 そのまま少しの間動けずにいると、私達の真横を宰相さんがツカツカと通り過ぎて行くのが見えた。


疾風(はやて)。お前……」


 そして宰相さんは木綿先生をジロリとねめつけた後、ガッと先生の襟元を掴んで勢いよく叫んだ。