雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



「……転機はやはり22年前。高校の卒業を間近に控えたある日の朝のことでした。私がいつものように姫様の身支度を手伝っている時に、あの方は言ったのです。〝紫蘭の病を治す方法が見つかった〟と――」

「ええっ!? それってどんな方法なんですか!?」


 それが本当なら、九条くんだって救えるかも知れない!!
 私が食い気味に尋ねると、その問いに答えてくれたのは三日月さんではなく、宰相さんだった。


「〝代々皇族に伝わる一子相伝の秘術〟……ですな」

「え? 皇族に伝わる秘術……?」


 何やら凄そうな響きだが、意味も分からずただ言葉を繰り返す。
 するとそんな私に宰相さんは重く頷いた。


「皇女殿下はご存じですかな? 皇族は人間でありながら、妖怪のように術を行使する能力があると言われていることを」

「え、あっ……!」

『……皇族は人間でありながら、妖怪のようにいくつかの〝術〟を使うと言われている。もしかしたら陛下も何か相手の秘めたものを暴く(すべ)をお持ちなのかも知れない』


 そういえば以前ティダで皇帝陛下に会った後、九条くんがそんなことを言っていたような。
 あの時は九条くんも確証はなさそうだったけど、じゃあ本当に皇族は術を……?


「と言っても、かつて妖怪と人間が争った時代とは違い、今は能力を持つというだけで形骸化していますがな。そしてその中でも葛の葉殿が目をつけたのが、〝全能(ぜんのう)(じゅつ)〟だった」

「ぜ、全能術……? 聞くからに凄そうな名前ですね」

「実際とてつもない代物です。何せ全能術ならば、いかなる事象をも変えることが出来るのですから」

「そっ……!」


 それは確かに奇跡みたいな術だ。
 トンデモ当主が目をつけたのも理解出来る。


「じゃあ九条葛の葉は、その術で紫蘭さんの病を治そうと?」

「はい、姫様はそう考えたようです。けれど……」


 言い淀む三日月さんの後を、宰相さんが引き継ぐ。


「陛下はその頼みを断りました」

「!? どうして!?」


 紫蘭さんが助かるのなら、術を使えばよかったのに!! 
 そんな気持ちで叫ぶと、宰相さんは重い息を吐き、目を閉じた。