「お願い、お願いだから出して!! 私がここに連れて来られる直前、九条くんが発作を起こしたの!! このままじゃ、九条くんが……!!」
――ドンドンドンッ!!
反応が無いことが分かっていても、叩く手が止められない。
何度も何度も何度も扉を叩く手が震える。
ボロボロと溢れる涙も止まらない。
――でも、諦めない。絶対に。
『……俺は付き合うと決めた時、もうこれ以上彼女に俺のことで哀しい顔はさせないと、そう覚悟していましたから』
みんなの前でそこまで言ってくれた。
私はその気持ちに応えたい。
だって幸せにするって、ずっと一緒に生きていくって、決めたんだから……!!
思いのまま、鉄扉に向かって振り上げる拳。
「お止めください。手の皮膚が破れ、血で真っ赤に濡れております」
しかしそれは何者かによって止められてしまう。
「――――」
不意にそっと手を取られたので振り返ると、顔に狐面をつけた巫女服の女性が目の前に立っていた。
なんの気配も感じなかったけど、まさか転移の術で……?
「とりあえず応急処置をしますね」
「…………」
女性は九条家で相対した暗部達とは違う。
先ほどお母さんや九条くんを襲撃した、九条葛の葉が化けた姿とももちろん違う。
そう、彼女は――。
「暗部長さんっ!!!」
この人は九条葛の葉が指示をして、九条くんを監視していた人物。
警戒するべきだって思うのに、何故か頭とは裏腹に、私は彼女に縋りついて泣き叫ぶ。
「お願い!! ここから出して!! 九条くんが……!! それにお母さんも……!!」
「はい、もちろんそのつもりでこちらへ参りました」
「ふむ。あまりの冷気で室内が氷点下に達しておりますな。雪女の妖力はやはり絶大だ」
「…………え」
凛とした暗部長さんの言葉の後に聞こえた、覚えのある威厳のある声。それに私はピシリと固まる。
だってこの声がここで聞こえるのはおかしい。あの人があんな一大事に陛下の元を離れるはずがない。
だって、だって彼は――……。
