雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



「ではな」

「ちょっ!!」


 しかしその正体を確かめる前に、九条葛の葉が指先をパチンと鳴らした。
 これは前にも見た、転移の術だ!! 逃げられてしまう!!


「……一応言っておくが、逃げ出そうとしても無駄じゃ。今も姿が見えないだけで、何人もの暗部がそなたを見張っておる」

「……っ、待っ……!」


 声を張り上げて静止するが、九条葛の葉の体は一瞬にして火に包まれ、その姿は跡形もなく消えてしまった。
 私は一人取り残され、地下室は静寂に包まれる。


「どうしよう……」


 とにかく方法を考えなくちゃいけない! ここから出る方法を……! 

 まずこの邪魔な手枷を……。


 ――パキィーン!!


「は……?」


 邪魔な手枷をなんとかしなくちゃと考えた矢先、突然何かが割れるような音がして、不意に両手首が軽くなった。


「え、ええ……?」


 見れば一体何が起こったのか、手枷が見事に割れて、床に転がっている。
 どうやら今のは手枷が割れた音だったらしい。
 鉄製のとても頑丈なものだったのに、急に何故……?


「ま、まぁいいや! これで動けるようになったんだし、早くここから出ないと!」


 今は余計なことを考えている時間はない。
 私は立ち上がって地下室唯一の出入り口である、鉄扉のノブに手を掛けた。
 しかしもちろん扉には外側から鍵が掛かっており、開けられない。


「出してッ!!」


 ドンッ!! と鉄扉を叩くが、なんの反応も無い。


「聞いてるんでしょ!? 出してよっ!! ねぇ!!」


 私を見張っているという暗部達に呼びかけるが、しかし声どころか、物音ひとつしない。

 暗部達は知っているだろうに。
 九条くんがどんな目にあったのか、自分達の当主が何をしたのか。

 なのに、どうして……?


『ごほっ、がほっ!』


 脳裏に浮かぶのは、暗転する直前に見た九条くんの姿。あんなおびただしい量の血を吐いている姿は初めて見た。


『この病はどんなに高名な医者でも治せなかった、原因不明の奇病です。発症したが最後、発作的に妖力が体の中で暴れ出し、異常な発熱と呼吸困難に陥る。そしてそれは年齢を重ねるごとに重症化し、例外なく二十歳前後で発症者は死に至る』


 まさかもうその時(・・・)が、タイムリミットが来たって言うの……?

 もしこのまま九条くんと二度と会えなくなってしまったら、私は……。


「お願いっ!! 誰か答えてよっ!!」


 ――ドンッ!!!


 思いっきり鉄扉を殴りつけるがビクともしない。

 半妖の癖に、なんの妖術も知らずに育った私。
 こんなことなら、攻撃用の妖術くらい覚えておくんだった!!