「なっ、何これ!? 外してっ!!」
「ほほほ、母親が無様なら娘も無様。そなたにはその姿がお似合いじゃ」
「バカなこと言ってないで、さっさと外しなさいよ!! お母さんもだけど、九条くんは発作を起こして倒れたんだよ!! しかも今までにないくらい、酷く!! なのになんでそんな状況で笑ってられるの!? 所詮義理の息子だから、九条くんが死んだってどうだっていいって訳!?」
「…………」
はぁはぁと息を荒げて一気に叫ぶと、九条葛の葉は笑みを消してじっと私を見る。
そしてザリザリと足音を立ててこちらに近づくと、ぐいっ! と私の髪を思いっきり引っ張った。
「いっ……!!」
「小娘が分かった口を聞きおって。そなたに何が分かる? 神琴のことも風花のことも國光のことも、そして何よりもこの妾のことを何も知らないというのに……!」
「うう……」
髪を引く力がますます強まり、私は痛みに呻き声を上げる。
私を見る九条葛の葉の表情は黒いレースに覆われていて見えない。
しかし私の髪を握り締める手はぶるぶると震えていて、怒りに戦慄いているであろうことは窺えた。
「っ」
「……?」
……あ、れ? 違う、なんだか様子がおかしい。
これは怒りで手が震えているんじゃない。
よく見ると薄っすらとレースから透けている九条葛の葉の顔色は酷く悪く、滑らかな頬にはいくつも汗が浮かんでいる。
なんで? まさかこの人まで何かの病気なの……?
訝しんで彼女の顔をジッと見ていると、不意にパッと髪を離された。
「わっ!?」
反動で背中を石壁に打ちつけ、私が痛みで顔を顰めると、九条葛の葉は自身の長い黒髪をかき上げ、つまらなそうに鼻を鳴らした。
「……ふん、まぁ何も知らなくて良い。どの道そなたにはなんの関係も無い話じゃ」
「は?」
「妾が用があるのは國光と風花だけ。その娘には用は無い。しかしそなたはあまりにも神琴の周りをうろちょろとうるさいからな。事が終わるまでここにいて貰うぞ」
「事って……!!」
この期に及んでまだ何かするつもり!?
うっそりと笑う九条葛の葉に、私の中の何かがグツグツと煮えたぎるように熱くなっていく。
「どういうつもり!? これ以上お母さんや九条くんに何かするつもりなら、絶対に……、絶対に許さないからっ!!!」
――ピシピシピシ
「!?」
思いのままに叫んだ瞬間、突然背後から何か割れるような音がして、私はそれに気取られる。
