「え――――」
「國光ッ!!!」
聞いたことの無いようなお母さんの鋭い声と共に、ドンっと何か妖力が爆発したような音がする。
それにハッと目をやれば、お母さんが顔を蒼白させて陛下の胸に倒れ込んでいるのが見えた。その抑えた右腕からは、じわっと血が滲んでいる。
「お、お母さ……!」
頭が真っ白になり、私は一目散にお母さんの元へと駆け寄ろうと走る。
――――ドンッ!!
しかしその瞬間、再度激しい爆発音が響き、誰かに強く背中を押された。
「きゃあっ!!」
「まふゆっ!!」
「……ぅ、っ」
ドッと地面に倒れ込んだ体を起こし、なんとか顔を上げる。
すると目の前に広がっていたのは、大きな豪火が更に巨大な豪火に呑み込まれて消えていく瞬間だった。
「――――うそ」
この光景、覚えがある。
それはそう、あの九条家の地下室で――!
「ごふっ、ごほっ……!」
「!? 九条くんっ!?」
あの時と同じ、美しい白銀の狐耳と九つある長い尾。
本来の妖狐の姿となった九条くんが、私の目の前でがっくりと膝をつき、激しく咳き込んでいる。
「九条くんっ……!!」
それに慌てて立ち上がって、彼の顔を覗き込めば、あまりの光景に私は言葉を失った。
「ごほっ、がほっ!」
「あ、ああ……」
激しく咳き込み続ける口元からは血が吹き出し、べっとりと体と美しい白銀の尾を汚していく。
ガンガンと酷く頭が痛い。
あちこちから何かを叫ぶ声がするが、何も聞き取れない。
これは現実? お母さんが倒れて、九条くんもこんな……。
なんとか、なんとかしなきゃ!
私の、力……で。
「ああ、あああ……!」
ガクガクと震える腕を叱咤して、なんとか指先に妖力を込めようとする。
……しかし、
「――――無駄じゃ」
ザリザリと地面を蹴る草履の音に、鈴を転がしたような美しい声。
それが聞こえた瞬間、私の世界は暗転した。