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「な、なななな……!」
私を始めとした生徒会の面々は、帝都を模した街並みに颯爽と羽織をはためかせて現れた人物を見て、石のように固まった。
生徒会主催鬼ごっこのルールはこうだ。
選手はクラスから一人ずつ選出。制限時間内に一人でも鬼から生き残れば選手側が勝ち。
逆に選手が全滅すれば、生徒会側の勝ち。
――そう、つまり選手は全員〝生徒〟のはず。
それなのに……。
「なんで皇帝陛下がいるのぉぉーーっ!!?」
「はははははっ!」
叫んだ拍子につい皇帝陛下を指差してしまったが、当の陛下は気にした様子もなくケロッとして笑う。
「なぁに。生徒達の活躍を見て、私も久々に体を動かしたいと思っただけだ。昔は〝冒険好きの殿下〟と言われあちこち出歩いたが、最近はデスクワークばかりでいかん。しかし何を驚いている? 日ノ本高校は学校関係者なら誰でも垣根なく参加出来るはず。ならば私が出場しても、なんらおかしくはあるまい」
「いやいやいや! だって陛下は生徒でも教師でもないじゃないですか! なのに……!」
「あら、國光は立派な学校関係者なのよ。だって日ノ本高校の理事長なんだもの」
「はっ? …………はい?」
ひょこっと陛下の背後から現れたお母さんにギョッとするが、今はそっちに驚いている場合じゃない!
り、理事長? 皇帝陛下が?? そんなのってありなの!? ていうか、じゃあまさか……。
「お母さんが前にカイリちゃんに言ったっていう、〝強いツテ〟って……」
「そ、國光のこと。ていうかなぁに? みんなして固まっちゃってぇ。他の選手の子達みんな向こうを走ってるわよ? 捕まえなくていいのかしら? このままじゃ生徒会が負けちゃうけど?」
「あっ……!」
そ、そうだ! なんか現実逃避しかけたけど、私達は鬼ごっこをしていたんだった……!!
そして我に返ったのは私だけじゃなかったらしい。夜鳥くんがこちらを見て叫んだ。
「おい雪守! オレらは他のヤツら追いかけるぞ!」
「え」
「陛下と風花さんのことは任せたよ、雪守ちゃん!」
「え、ええっ!? ちょっ……!!」
雨美くんも夜鳥くんに追随するのを慌てて止めようとするが、それを無視して二人して走り去ってしまう。
「も、もーっ!!」
みんなして面倒だからって、私に押し付けて!!
ていうか九条くんはどこへ行ったの!?
半ば自棄になってお母さんを捕まえようとするが、しかしヒラリと身を躱されてしまう。
「ふっふっふーん。鬼さんこっちらー」
「むぐぐ……」
陛下はともかく、お母さんは絶対に確保したい!
そう、私が意気込んだ瞬間だった。
「――往ね」
私とお母さんの間に、狐面をつけた巫女服の女性が現れたのは。
