「うちのクラスの女子達さ。彼女達に俺がさっきのクジを引けるよう、細工してもらったんだ」
「さ、細工!? なんでそんなこと……」
確かにうちのクラスの女子なら九条くん大好きだし、頼めば二つ返事で細工だろうが、裏工作だろうが、するに違いない。
でもそんなことをしていたことが万が一他にバレたら、九条くんは一位を取ったヒーローから、一気に不正を働いた悪役へと転落だ。
特に九条くんは生徒会長なんだし、大問題になるだろう。
どうしてそんな危険を冒してまで、クジに細工したのか。理由が分からず、私は戸惑う。
「ふーん……」
「?」
するとそれまで私と一緒に真剣な表情で九条くんの話を聞いていたカイリちゃんが、途端に呆れたように息を吐いた。
そしてそのまま席に戻ろうとするので、慌てて呼び止める。
「ちょっ! ちょちょちょ、カイリちゃん! なんで何事もなかったように、席に戻ろうとしてるの!?」
「いやだって、つまり頭ん中がピンクだったのは、まふゆだけじゃなくて銀髪もだったってことだろ? もうそれだけ分かりゃいいもん。あたしお腹いっぱいだし」
「えええ、どういうこと!?」
完全に興味を失った様子で投げやりに言うカイリちゃん。
しかしそれが私には本気で理解出来なくて、うろたえていると、朱音ちゃんがクスクスと笑い出した。
「ふふふ! あのね、まふゆちゃん。簡単に言うと神琴様は、まふゆちゃんとの関係をずっと言いたくて仕方なかったってことだよ! ねっ、そうですよね! 神琴様!」
「え」
そ、それって――。
思わず九条くんを見るが、スイっと顔を逸らされる。でもその頬が赤いことを私は見逃さなかった。
「…………っ!」
九条くんが何故そのような行動に出たのか。
それを理解した瞬間、ぶわっと私の頬も熱くなる。
わ、あああ! そういうこと!?
つまり九条くんも、私達の関係を知らない他の男子と私が接近するのが嫌だって、そう思ってくれてたってことだよね……!?
「九条く……っ、わっ!?」
嬉しくて未だ目を合わせてくれない九条くんをニマニマと見つめると、不意にバンッ! と思いっきり背中を叩かれて、私はよろめく。
「もうっ、何!? お母さん!!」
振り返れば案の定犯人はお母さんで、怒る私を見てケラケラと笑い出した。
「あはは! これでアンタ達は学校公認カップルってヤツね。はー青春ねぇー。ちょっとわたしは國光慰める為に、来賓席に行って来るわ」
「え? う、うん……」
なんで陛下を慰めるの?
そもそも貴賓席って、そんな気軽に行けるものなの?
「……?」
よく分からないが、とりあえず去っていくお母さんを見送り、私はまだ照れている九条くんを引っ張って、自分の席へと着いた。