雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



 ◇


 九条くんに連れて来られたのは、保健室だった。
 ちょうど保険医は職員会議中らしく席を外しているらしい。


「……っ」


 口の中がとても苦い。私は誤ってしまった。先ほどの自分の軽率な判断を罵る。
 あの時(・・・)、彼女達の誘いを断ればこんなことにはならなかった。彼女達もまた、違った未来になっていた筈なのに。


「……雪守さんさぁ」


 唇をぎゅっと噛み締めていると、私の体の怪我を調べていた九条くんが不意に呟いた。


「まさか自分が悪いとか思ってるの?」

「……思うに決まってる。だって私が一言半妖だって言えば、彼女達は罪に問われない。なのに私は自分のために黙ってる。最低だよ」


 やっと口が動かせるようになり、ポロリと言葉がこぼれた。

 日ノ本帝国(ひのもとていこく)では妖力の使えない人間に妖怪が妖力を使うことは重罪であるが、妖怪同士であれば妖力の行使は罪に問われない。これは半妖も同じ。
 つまり私が半妖だと明かせば、彼女達は救われる。なのに私は自分のことばかり……。


「君はバカがつくお人好しだ」


 すると九条くんが大袈裟に溜息をついた。
 それに思わず顔を上げて九条くんを見れば、彼もまた私を見ていて、金の瞳と見つめ合う。


「いいかい? 彼女達は君が気に食わないなんて、理不尽な理由で妖力を使ってきたんだ。それを怒りこそすれ、同情する必要なんてこれっぽっちも無い。そこに君が妖怪か人間かなんて関係ないんだよ」

「うん、言ってることは分かるよ。でも、彼女達のさっきの様子はなんだか普通じゃなかった。本当はただ、九条くんが好きだっただけなんだよ。なのにこんなことになるなんて、遣る瀬ないよ……」

「? 様子が(・・・)普通じゃない(・・・・・・)……?」