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九条くんに連れて来られたのは、保健室だった。
ちょうど保険医は職員会議中らしく席を外しているらしい。
「……っ」
口の中がとても苦い。私は誤ってしまった。先ほどの自分の軽率な判断を罵る。
あの時、彼女達の誘いを断ればこんなことにはならなかった。彼女達もまた、違った未来になっていた筈なのに。
「……雪守さんさぁ」
唇をぎゅっと噛み締めていると、私の体の怪我を調べていた九条くんが不意に呟いた。
「まさか自分が悪いとか思ってるの?」
「……思うに決まってる。だって私が一言半妖だって言えば、彼女達は罪に問われない。なのに私は自分のために黙ってる。最低だよ」
やっと口が動かせるようになり、ポロリと言葉がこぼれた。
日ノ本帝国では妖力の使えない人間に妖怪が妖力を使うことは重罪であるが、妖怪同士であれば妖力の行使は罪に問われない。これは半妖も同じ。
つまり私が半妖だと明かせば、彼女達は救われる。なのに私は自分のことばかり……。
「君はバカがつくお人好しだ」
すると九条くんが大袈裟に溜息をついた。
それに思わず顔を上げて九条くんを見れば、彼もまた私を見ていて、金の瞳と見つめ合う。
「いいかい? 彼女達は君が気に食わないなんて、理不尽な理由で妖力を使ってきたんだ。それを怒りこそすれ、同情する必要なんてこれっぽっちも無い。そこに君が妖怪か人間かなんて関係ないんだよ」
「うん、言ってることは分かるよ。でも、彼女達のさっきの様子はなんだか普通じゃなかった。本当はただ、九条くんが好きだっただけなんだよ。なのにこんなことになるなんて、遣る瀬ないよ……」
「? 様子が普通じゃない……?」
