「よくぞ聞いてくれました、雪守さん! そうです、僕は今の今まで学校長の説教を受けていました! しかし学校長は一度話に夢中になると、もはや目の前に誰もいなくても永遠に話し続けます! 故に僕が消えても、全く気がつかないのですっ!!」
「え、ええー……」
それってつまり、学校長室から抜け出してきたってことじゃ……? 大丈夫なのソレ?
思わず冷や汗をかくが、当の木綿先生はケロッとしたまま宣言する。
「とゆー訳で、午前の徒競走のリベンジですよぉぉぉ!! 今度こそ僕が一位になるんですっ!! ……うぃっく」
「ヤダわ。先生ったら、まだ酔ってるのね。やっぱり泡盛一升ラッパ飲みは、やり過ぎだったかしら?」
「やり過ぎだよっ!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
ペロっと舌を出すお母さんにツッコミを入れた直後、未だ酔っ払いの木綿先生がお母さんを背負ったまま超加速をする。
もはや私達と先生達の間に差は無い。それどころかぐんぐんと距離は縮まり、ついには追い抜かされてしまった。
てっきりホラかと思ってたけど、一反木綿姿じゃなくても、こんなにも木綿先生って足が速かったんだ……!
「……っ、仕方ない。まふゆ、しっかり俺に掴まっているんだ」
「――――え?」
木綿先生の快進撃にポカンとしていると、頭上から焦ったような声が響く。
それに何? と思った瞬間……、
「キャアアアアアアアッ!!!」
「いやあああああ!! 神琴さまぁぁぁぁぁ!!!」
競技場が悲鳴で湧いた。私自身も声にならない悲鳴を発する。
「~~~~っ!!」
「舌を噛んで怪我しないようにね」
「っ、ぅ」
舌どころか、心臓が破裂して死にそうなんですけど!?
だってだって、九条くんが私をお姫様抱っこして走り出したんだもん!!
急な浮遊感に気が動転したまま固まっていると、女子達の声がまたあちこちから聞こえてくる。
「きゃああ!! 神琴さまが木綿先生を抜き返したわっ!!」
「雪守さんがお姫様抱っこされてるのは癪だけど、神琴さま頑張ってぇーー!!」
「ううう……」
九条くんがお姫様抱っこしたことに他意がないのは分かっている。
のたのた走る私の手を引いたままだと、絶対に木綿先生には勝てないからだろう。
でもだからってなんでお姫様抱っこ!? お母さんみたいにおんぶでいいじゃん!!
……いや、別に嫌な訳じゃない! むしろ嬉しい。
けど各所から女子達の悲鳴が聞こえて、後が怖すぎるぅぅ……!!
