「うそぉぉ!! 借り出されたのは、雪守さんっ!?」

「なんでいっつもあの人ばっかなの!? 一体クジにはなんて書いてあったのかしら!?」


 観客席がきゃあきゃあと騒がしい中、クジ箱の前へと辿り着いた私は、そのまま九条くんに手を引かれ、今度はゴールを目指して一緒に駆け出した。


「く、九条く……」

「まふゆ、ありがとう。来てくれて」

「う、うん」


 ぎゅっと手を繋ぎ、爽やかな笑顔を向けられ、ドキドキと胸が高鳴る。
 本来ならレース中にこんなに悠長に話しながら走ったりは出来ないのだが、後方との差が絶大なのでまだまだ余裕がある。私は気になることを聞いてみた。


「それは全然いいんだけど、でもどうして私? クジにはなんて書いて……」

「ちょっと待ったぁぁぁぁーーーーっ!!!」

「!!?」


〝クジにはなんて書いてあったの?〟

 そう尋ねようとした瞬間、後ろから突然大声が聞こえたかと思うと、巨大な土煙を巻き上げて何者かの人影がこちらへと猛スピードで駆けて来るのが見えた。


「九条くんっ! 雪守さんっ! 余裕ぶってるのもそこまでですっ!! 一位は僕と、この風花(かざはな)さんが頂きますよぉぉぉぉぉっっ!!!」

「まふゆ~、のんびりしてたら形勢なんてあっという間に逆転されちゃうわよ~」

「はああっ!!?」


 なんとその人影の正体は木綿先生!! しかも先生の背中には、お母さんも居るではないかっ!!


「も、木綿先生!? お母さんまでなんで!? ちゃっかりおんぶされてちゃってるしっ!!」

「わたしはホラ、先生に借り出されたのよ~。ついさっき」

「借り出され……って、先生いつの間に参加してたの!? 学校長にお説教を受けてたんでしょ!?」


 必死に走りながらも声を張り上げて叫べば、何故か木綿先生がふふんと、得意そうな顔をした。