「っ……!」
体を縮めて歯を食いしばり、どうにか衝撃をやり過ごす。そしてどれだけそうしていただろうか? ようやく辺りがシンと静まりかえったのを見計らい、私は恐る恐る目を開く。
「あ……」
すると視界いっぱいに広がるのは、先ほどの火球ではなくて……。
「雪守さん、……無事?」
息を荒げた九条くんが、私を庇うようにして立っていた。
「ど、して……」
ここに居るの? いや、それよりも体が悪い癖に、そんなに息を切らして大丈夫なのだろうか?
「……?」
周囲を見渡せば、あれだけの爆風だったにも関わらず、校舎の窓ガラスはただの一枚すら割れていない。それに九条くん以外には、爆発音を聞いても駆けつける人はいなかったようだ。
でも、それもそうか。学内での妖怪と妖怪の諍いはわりと日常茶飯事なので、校舎には常に結界が張られているし、わざわざ他人の争いに巻き込まれに来る物好きもいない。
ならば九条くんは、私が校舎裏にいると知って駆けつけてくれたのだろうか?
状況を察するに、九条くんがあの火球から助けてくれたのは間違いなかった。なら早くお礼を言わないと。そう思って、私は口をパクパク動かす。
「……あ、れ……?」
けれど口が上手く動かない。
「無理にしゃべろうとしなくていい。体が震えている」
そう言って九条くんが私の髪を撫でる。
恐らく爆風にあおられてボサボサになった頭を、見かねて整えてくれているのだろう。私は黙って九条くんにされるがまま、大人しくする。
「……さて」
そうして不思議なくらい穏やかな空気が流れた頃、私の髪を撫でる九条くんの指先が止まり、金の双眸が親衛隊を捉えた。
「それで君達はここで、雪守さんに何をするつもりだったんだ?」
「わ、私達はこんなつもりじゃ……っ!」
リーダーだろう妖怪女子が、淡々とした九条くんの言葉にそう叫んだ。
彼女達は地面にうずくまって顔を青ざめさせ、私と同じくらいにガクガクと震えている。あの黒い妖力は、いつの間にか彼女達から消えていた。
「どのような経緯であれ、人間に妖力を使い、攻撃することは禁じられている。主犯は君みたいだけど、周りの者も同罪だ。この件は学校側にも報告するからそのつもりで」
「あ……、ああ……っ!!」
「っ」
「――雪守さん」
泣き崩れる彼女達に思わず言葉を掛けようとするが、九条くんに制止されてしまう。
「行こう」
「……う、うん」
そして私は彼に促されるまま、その場を後にする。
すすり泣く彼女達の声がずっと、耳にこびりついたまま――。
