「おいっ! その狐面は忘れもしねぇ! 九条家の暗部じゃねーかっ!!」
「な、なんで学校に……!?」
「…………」
警戒心を露わにして叫ぶ、雨美くんと夜鳥くん。
しかしそれには何も答えず、狐面を被った女性――暗部長は、九条くんへと何かの包みを差し出して首を垂れた。
「神琴様、主様より差し入れです」
「は? 葛の葉……?」
意外な人物の名を出されて困惑した顔をしつつも、九条くんはその包みを受け取る。
「何が入ってるんだろう?」
「うん……」
私の言葉に頷いて、九条くんが包みを解いた。
すると中からは黒いお重が現れて、その蓋を開けると入っていたものは――……。
「え……何これ」
「いなり、寿司……?」
漆塗りの立派なお重の中にぎっしりと敷き詰められていたのは、黄金色のお揚げに酢飯を包み込んだ、見るからに美味しそうないなり寿司だった。
さっき〝差し入れ〟って言ってたし、まさかこれ、昼食にってこと……?
「……なんで」
「え、うそ……」
「?」
しかしいなり寿司を凝視する九条くんと朱音ちゃんの様子がなんだか変だ。二人とも明らかに動揺を隠せずにいる。
そしてそのまま、朱音ちゃんが暗部長へと詰め寄った。
「あ、暗部長……! これ……、どうして……?」
「先ほども言ったではないですか、〝主様から神琴様へ〟渡すよう言われたのですよ。朱音、貴女も暗部を離れて久しいですが、くれぐれも暗部としての勘は鈍らすことのないよう」
「それは、どういう……?」
朱音ちゃんは困惑したように暗部長さんを見上げる。
