「なんか懐かしいな。九条様が全校生徒一喝して雪守抱えて出て行っちまったから、ホントあの場収めんの苦労した」
「そーそー。でも九条様になんとかしろって言われた手前、ほっとく訳にもいかないからねー」
「え……」
何それ、初耳なんだけど!? そんなことがあの時あったの!?
てっきり私、学校長の長話でみんなが改心したものと思っていたのに……!!
「二人の言ってること、本当なの?」
慌てて九条くんを見ると、困ったように微笑まれる。
「そうだね。あの時はまふゆが倒れて、ついカッとなってしまったんだ。気がついたら後先考えず、体が勝手に動いてた。結果的に賭けの話は一気に消えたし、言ってよかったと思うけど」
「…………っ!」
九条くんの言葉に、ぶわっと頬が熱くなるのを感じる。
だってあの時、目を覚めしたら側に居てくれただけでも嬉しかったのに、まさか私の為に怒ってもくれていたなんて……!
嬉しさでドキドキと鼓動が高鳴るのを感じながら、私は九条くんをジッと見つめる。すると誰かがゴホンとひとつ、咳払いをした。
「はいはい、万年バカップル。そのピンクのオーラやめなよ。なんか見ててむず痒くなる」
「なっ、え……!」
振り返れば、呆れたような表情でカイリちゃんがこっちを見ている。それに一気に羞恥心が噴き出して口を開き……、しかし私はそのまま口を閉ざした。
何故なら周囲の観客席で昼食をとっていた他の生徒達が、こちらをチラチラと興味津々に見ているのが目に入ったからだ。
あの目つき、見覚えある。よくみんなが私と九条くんに向ける生暖かい視線を同じ……。
「うぅ……」
夢中になっちゃうと九条くんしか目に入らなくなる癖、なんとかしたいなぁ。
私は恥ずかしさを誤魔化すように、お菓子の包みに手を伸ばす。
――しかし、
「ご歓談中、失礼します」
「!?」
突如目の前に現れた見覚えのある狐面の女性により、恥ずかしくも和やかだった空気は一変した。
