「あ、見て! 一気に雷護が飛び出したよっ!」
「じゃあやっぱり一位は夜鳥さんで決まりですか?」
本人の宣言通りの快足に、私達は歓声を上げる。
「……いや」
しかし九条くんがそう呟いた瞬間、レースの先頭を走る夜鳥くんを白い何かが一瞬にして抜き去り、その人物が一気にトップへと躍り出た。
「!? なっ……!?」
「えっ!? 今のって、まさか……!!」
「うん。一反木綿になった木綿先生だね」
「ゴーーーール!! 一位はなんと前回覇者の夜鳥氏を大きく抜いて、木綿先生だあぁぁっ!!!」
まさかのダークホースの登場に興奮したアナウンスに、ワッと観客席も盛り上がる。
けれどそこで、お母さんが泡盛を飲みながら不思議そうに首を傾げた。
「あら? でも妖怪が本来の姿で出場するのは、NGじゃなかったかしら? 人間との公平を期する為に」
「はい、その筈です」
「え、じゃあ……」
「あ、やばっ!」
「え?」
慌てたような雨美くんの視線を辿ると、ちょうど般若のような顔をした学校長が、木綿先生へと近づいて行くところだった。
「くぉら!! 木綿先生っ!!!」
「ひっ!? がっ、学校長!!?」
「君は一体何をやっとるんだ!? 生徒達のお手本とならなければいけない立場でルールを破り、あまつさえ就業中に飲酒までしておるとは! 特に今日は皇帝陛下の御前なのだぞ!! ちょっと弛んどるんじゃないのかね!?」
「い、いえ……、そんな……、滅相もないですぅぅ……」
「言い訳はいいから、ちょっと学校長室に来なさいっ!! 君にはしっかりとお説教だっ!!!」
「そ、そんなぁ~!!」
二人の大声は観客席にまで響いており、学校長に引き摺られてドナドナされていく木綿先生の姿は、注目の的となった。
もちろん皇帝陛下もバッチリ見ており、楽しそうにケラケラと笑っている。
……その横に座る宰相さんの表情はあまりに怖すぎるので、見なかったことにしよう。
「えー……、発表します! 審議の結果、今の木綿先生の記録は取り消し! 取り消しです!! その結果繰り上がりまして、二位の夜鳥氏が100メートル徒競走の一位となります!!」
学校長と木綿先生が去った後、発表されたアナウンスにまたワッと観客席が盛り上がる。
そして大きな拍手と共に、夜鳥くんの首に金色のメダルが掛けられた。
