「しかしまふゆに男……。ああ、頭が……」
「10代後半の思春期に青春はつきものです。陛下ご自身も思い当たるところがあるのでは?」
「うるさいっ。それとこれとは話が別だ。言わずとも察しろ、頭の固いヤツめ」
「ふーん、でもそうなんだぁ。九条くんと、ふーん……」
「うう……」
なんで私の彼氏の話題でこんなに盛り上がってるの? い、居たたまれない……。
羞恥のあまりソファーの隅で小さく縮こまっていると、陛下がコホンとひとつ咳払いをした。
「そうだ、時にまふゆ。その、くだんの……九条家の彼の様子はどうだ? 先ほども少しだけ姿を見たが、表情だけでは分からん。何か変調は無いのか?」
「え」
「ティダでは発作を起こして倒れていただろ」
「あ、ああ!」
そうだった。陛下には九条くんの病気のことを、詳しく聞きそびれたままだったんだ。
結果的に九条家の暗部長であるという狐面の女性によって知ることとなってしまったけど、この人は九条くんのお父さんである紫蘭さんとも仲がよかった人。
お母さんも紫蘭さんとは同じ生徒会だったというし、色々尋ねるいい機会かも知れない。
――でも。
「…………」
チラリと陛下の背後に立つ宰相さんに視線を向けると、それを見た陛下が微笑んだ。
「心配せずとも、正宗も九条家の奇病の件は承知している。気兼ねせず話すといい」
「そうなんですね」
その言葉にホッとして、私は口を開く。
「えっと、九条くんは……、以前陛下が立ち会われた時よりも症状は進行しています。……確実に」
「そうか……やはり」
「それで実は陛下にお聞きしたいことがありました。その、紫蘭さんはやっぱりもう……?」
端的な問いだけで私が言いたいことを理解したのか、陛下が頷く。
「うむ。アイツは当時まだ26歳。かの病を患った者の中では長命な方ではあったのだろうが、それでも誠に早すぎる死だった。妻と幼い息子を残していくのはさぞ無念であっただろう」
「〝妻〟……」
そうだ。
紫蘭さんととても仲が良かったという陛下なら、九条くんのお母さんのことを知っているかも知れない。
あのトンデモ当主じゃなくて、彼の〝本当のお母さん〟を――。
「あの、九条くんのお母さんってどんな方なんですか?」
「え?」
陛下に向かって尋ねると、それに先に反応したのは、私達の話を横で聞いていたお母さんだった。
何故か不思議そうに首を傾げている。
