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「まふゆ、こっちのフィナンシェも美味いぞ! 遠慮せずどんどん食べなさい」
「はぁ……」
最初こそ緊張したものの、異様にフランクな陛下に毒気を抜かれたというか、気持ちが緩んだというか。
なんだろう、本当に。
陛下とお母さんが友達だから、その友達の子供も可愛いってやつ?
まさか本気で私にお菓子を食べさせる為だけに、ここへ呼んだんだろうか……?
「そういえばまふゆ、さっきの見てたわよ。九条くんにここまで送ってもらっちゃってぇ。なんか漂う雰囲気も2か月前と違って甘ったるかったし、まさか何か進展でもあったの?」
「へぇっ!!?」
油断していたところにいきなり九条くんの名前を出されて、声が裏返ってしまった。
すると案の定面白いものを見たというように、お母さんが目を輝かせて、からかいモードへと突入する。
「何々? まさかくっついたの!? ついに!?」
「ついにって……、やっぱりお母さん、私の気持ち知って……あ゛」
またティダのパンケーキ屋さんの時と同じ墓穴を掘ってしまった……! は、恥ずかし過ぎる……!
私は頭が真っ白になって固まる。
すると目の前に座る陛下までもが何故か顔色が変わり、持っていたお菓子の包みをポトンと膝に落とした。
「く、くっつくって、何だー!? まさかまふゆに男が出来たのか!? しかも先ほど風花は〝九条くん〟と言っていたか……!?」
「え、ええっと……?」
突然めちゃくちゃ据わった目で陛下にそう問いかけられ、反応に困る。
え、なんで陛下はそんなに私の彼氏の有無に必死なの?
「陛下こそお嬢さんを怯えさせていますよ」
「そうよ。ただでさえウザいおじさんに敏感な年頃なのに、あんまり詰め寄ると嫌われちゃうわよ」
「おじっ……!? 嫌われ……!? そうなのか、まふゆ!?」
「い、いいえ! 陛下を嫌うなんて、滅相も無い!」
あまりの圧にブンブンと首を横に振れば、陛下がホッとしたように息をつく。
え、何これ? だからなんで陛下はこんなに私に好かれるかどうかで必死なの?
まさか本当に愛人にするつもり……は、無いか。奥さん一筋だって言ってたもんね。
