雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



「それにしても雪守さんのお母様、私どこかで見た覚えがあるような……? しかしあんな極上の美女をこの私が忘れる筈が……っと、ああっ! 今はそれどころじゃありませんっ! さぁ、とにかく急いで! 陛下を待たせる訳にはいきません!! そんなことをしたら、あの恐ろしい形相の鬼の宰相様に殺されてしまいますっ!!」

「え、あの……っ!?」


 普段話がバカ長い学校長が手短に話を終わらせようとするとは、本当に急いでいるということだ。〝鬼の宰相様〟恐るべし。

 ていうかあの宰相さんも一緒にいるんだ……。
 あの人、学校長じゃないけど怖そうでちょっと苦手なんだよなぁ……。

 ふぅと溜息をつくと、私の憂いが伝わったのか、九条くんに軽く肩を叩かれた。


「俺も貴賓室の前までだけど、一緒に行くよ」

「うん、ありがとう」


 その言葉に一瞬で不安な気持ちが安心へと置き換わる。

 はぁ、手を繋ぎたいなぁ。
 ああでも、学校長の前だし我慢しなきゃ。

 私と同じジャージ姿の九条くんは、去年は不参加だった体育祭に今年は参加するらしい。
 本当はずっと参加してみたいと思っていたのだと、昨日寮の自室で笑って言っていた。

 一緒に参加出来るのは嬉しい。
 でも、やっぱりちょっと不安。

 私の氷の妖力は、いつまで九条くんを癒してあげられるのだろう?
 もっともっと大きな力が私にあれば、九条くんをこれ以上苦しめなくて済むんじゃないだろうか……?


「あああ、雪守さん!! 甘い雰囲気はいいですから、とにかく急いでっ!!!」

「甘っ……!? いいえ、全然甘くないですからっ!!」


 むしろ我慢して甘い雰囲気を作らないようにしてるのに、何言ってるのこの人!?

 そう思いつつも、ぐいぐいと学校長に急かされるまま、私は貴賓室へと向かうことになったのだけれど……。