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「……え、皇帝陛下が私を呼んで……ですか?」


 ――主演舞台にハコハナへの小旅行と、慌ただしく日々が過ぎていった為、すっかり忘れがちではあったが、今日はいよいよ体育祭本番であった。

 生徒会は主体で動かなくていいという前置きではあったものの、体育委員会に運営について相談を受けることも多く、結局仕事量は文化祭の時とさして変わらなかったような気がする。

 とはいえ無事に当日の前準備も終え、生徒会としての仕事はほぼ終了。
 ホッとして九条くんと共にクラスのホームルームに出ようと教室へ向かっていたところに、学校長が慌ただしく私を呼び止めたのだ。


「そうなんですよ! 先ほどご到着された皇帝陛下を私がお出迎えしたら、開口一番に〝雪守さんには会えないのか〟と聞かれて」

「ええっ!!? っ、わぁっ!?」

「おっと、大丈夫?」

「あ、ありがと……」


 驚いて転びそうになったところを隣にいた九条くんに支えられ、私は慌ててお礼を言う。

 もう付き合っているのだから少し体が触れ合うくらいでいちいち動揺するのはおかしいのかも知れないが、でもドキドキするものはドキドキするのだ。
 絶対に胸の鼓動を聞かれているなと思いつつも、その温かな体からそっと離れる。


「あ、そうそう! 実は陛下とご一緒になにやらとてもお美しいご婦人が居られたので、どなたかと尋ねたら、なんと雪守さんのお母様だとおっしゃるじゃないですかっ!! 通りで似てるとは思いましたがっ!!」

「えっ!?」

「風花さんが皇帝陛下と?」

「とぉーっても陛下と仲が良さそうでしたよ! あんな女神みたいな女性とお話なんて、なんとも皇帝陛下が羨ま……ゲフンゲフン、失礼! お二人は一体どういうご関係なんですか!?」

「いや……」


 どうと聞かれても私も分かんない。しいて言うなら、同じ生徒会に所属していた友達……?
 
 ていうかお母さん、体育祭に来るとは言ってたけど、陛下と一緒にいるってどういうこと!? 
 カイリちゃんの編入試験の件といい、分かんないことが多過ぎるんだけど!?