どうしよう。これ以上、二人に言っていいのだろうか?
九条くんの病は妖狐一族の中でもかなりの禁忌であることは、暗部長さんの話からなんとなく伺えた。
それに……。
『なんだかんだ朱音にはお見通しなんだな』
『ふふ。これでも10年以上、神琴様を見守ってきましたから』
特に朱音ちゃんは本当に長い間、一番近くで九条くんを見守ってきたのだ。
病の真相を話せば、間違いなく酷くショックを受けるに違いない。
「そうじゃ、なくて……」
朱音ちゃんを悲しませたくない。
そう思えば思うほど、体は固く強張り、口は重くなっていく。
「――ねぇ、まふゆちゃん」
するとそんな私の手を、朱音ちゃんの柔らかな両手がそっと包んだ。
「話したいことがあるなら言って。何か言い難いことなのかも知れないけど、わたし達はちゃんと受け止めるから」
「朱音ちゃん……」
「そうだよ。〝一人で抱え込むな〟って前にあたしに言ったのは、他ならぬまふゆだろ? そのアンタがそんなんでどうする? 信じろよ、あたし達を」
「カイリちゃん……」
真剣な二人の表情、言葉。
それに胸がいっぱいになって、私はコクンと頷く。
「うん、そうだったね。大事なことなのに、忘れちゃってた。ごめんね、ありがとう二人とも」
本当に言ってしまってもいいのだろうか?
葛藤はまだ、私の中に残る。
でも……、
「実はね……」
滲む涙を拭いながら私はあの舞台の日の当日、暗部長によってもたらされた九条くんの病気の真相。
そしてハコハナ旅行の際に湖で吐血した一件についても話した。
完治が難しいこと。
寿命がもう残り僅かなこと。
彼の症状が、ここしばらくの間にハッキリと分かるほどに進行してること。
……全てを隠さず伝えた。
「っ」
するとそれをずっと黙って聞いていた朱音ちゃんが、一気に顔色を悪くして、ふらりと頭を抱えた。