「女子会しよう!!」


 そう言ったのは誰だったのか。
 朱音ちゃんだったかも知れないし、カイリちゃんだったかも知れない。

 とにかく私は二人に引き摺られるようにして、とある青と白を基調とした港町風の内装がお洒落なお店へと入ったのであった。

 ――カランカラン

 玄関ドアにつけられたベルが開閉の際に音を立てる。
 するとすぐさま見覚えのある老齢のご夫婦が現れた。


「あらあらカイリちゃん、お帰りなさい。朱音ちゃんとまふゆちゃんは、演劇部の打ち上げの時以来かしら」

「今日はもう店は閉めるから、店内でゆっくり話していいよ。夕飯は三人分でよかったかな?」

「はい。おじさん、おばさん、ありがとうございます」


 人の良さそうな柔和な笑みを浮かべるご夫婦に、カイリちゃんがペコリと頭を下げる。
 そして二人がそのまま厨房へと入っていくのをぼんやり見ていると、ぐいっと腕を引っ張られて椅子に座らされた。


「カイリちゃんの下宿先、やっぱりいつ来ても素敵なお店だね」

「うん」


 私の向かいの席に座った朱音ちゃんが店内を見渡して笑う。
 それにコクリと頷くと、既に準備されていたのか、飲み物と温かな湯気の立てた料理がカイリちゃんとご夫婦によって次々とテーブルに運び込まれてきた。


「わぁ、こんなにたくさん! これ、全部食べていいんですか?」

「ええ、もちろん。せっかくカイリちゃんのお友達が来てくれたんだもの。遠慮なく食べてね」


 所狭しと並べられた料理の数々は以前舞台の打ち上げで食べたお洒落な横文字の料理とは違い、どれも知っているティダの郷土料理ばかりだった。懐かしい光景に私は目を輝かせる。


「僕達はティダ出身ではないから見様見真似だけど、カイリちゃんに習って作ったんだ。よかったら食べてみてくれ」

「は、はい。いただきます」


 おじさんの言葉に私はおずおずと箸を手に取り、豆腐と白身魚を塩で煮た伝統的なティダの料理を口に含む。


「……!」


 するとなんということだろう……!
 口いっぱいに広がる懐かしい故郷の味に、私の胸がほわっと温かくなった。
 

「美味しい? まふゆちゃん」

「うんっ、すっごく美味しいよ! 二人も食べなよ!」


 笑って向かい側に座った朱音ちゃんとカイリちゃんに料理を勧めると、何故か二人はホッとしたように息をはいた。


「はぁ……、ちょっとは元気出たみたいだな」

「……え?」


 その言葉にキョトンと目を瞬かせると、カイリちゃんは朱音ちゃんと二人して苦笑する。