◇
「わぁ……!」
「確かにまるで絵の具を垂らしたみたいに、見事に鮮やかな青だな」
「うんうん! すっごく綺麗!」
朱音ちゃんに言われた通りに山を下ると、美しく大きな湖にすぐに辿り着いた。
どうやら私達が知らなかっただけで巷では人気のスポットだったようで、湖には遊覧船がいくつも走り、湖畔には出店がずらっと立ち並んでいる。
「あっ! 山あいに日ノ出山が見える! こっちからはお煎餅のいいにおーい!」
温泉街や地獄谷とはまた違った情景に心躍らせ、視線をあちこちに移す。
するとそんな私の手に、温かな九条くんの手が触れた。
「!」
「あんまりはしゃいでると、湖に落っこちるよ」
「さ、さすがにそこまでドジじゃないもん!」
「どうかな? ティダでボートに乗った時、危うく海に真っ逆さまだったのは誰だったかな?」
「うっ!」
わりと新しい情報を出され、返す言葉もない。
でもそれにクスクス笑う九条くんが悔しくで、私はなんとか言い返す。
「あれは動揺していたの! 事故なのっ!」
「へぇ? じゃあ何に動揺してたの?」
「そ、それは……!」
九条くんの水着姿……。有り体に言えば、剥き出しの素肌にドキドキしていました。……なんて、素直に言えば変態認定されそうで言えない。
思わず口篭っていると、九条くんが堪えきれないというように吹き出した。
「はははっ! 本当にまふゆって、嘘がつけないなぁ」
「うう……」
これは言わずとも伝わったというやつだろうか?
恥ずかしくて俯く私に、九条くんがポツリと呟く。
「俺だってあの時、同じくらい動揺していたよ。だってまふゆの水着姿は想像はしていても、実物の破壊力はやっぱり凄まじかったから」
「そ、想像!?」
「そりゃ好きな子の水着姿くらい、想像するよ。俺だって男なんだし」
「〝好〟っ……!? ……そ、そうですね」
「なんで敬語?」
「……なんとなく?」
「はははっ!」
九条くんは本当に楽しそうに笑っていて、それが無性に嬉しい。
まるでお互いの楽しいが伝染するみたいに、いつまでだって幸せな気持ちが溢れている。
「まふゆはまず何がしたい?」
「うーん、そうだぁ……」
――それからの時間はあっという間で、一緒に遊覧船に乗ったり、匂いにつられて出店のお煎餅を食べたり。いっぱい、いっぱい二人っきりの時間を満喫した。
でもこんなんじゃ全然足りなくて。
もっと、もっともっと、こんな風に笑い合いたい。話をしたい。一緒にいたい。……いつまでだって。
そう、願ってしまう。
でも――……、
