「すみません、ソーダ一杯お願いします」

「はいよ」


 学食にて。いつものように受付のおばちゃんに注文すれば、すぐにソーダが差し出される。


「ありがとうございます」


 それにお礼を言って受け取り、席に着いてゴクゴクと一気に飲めば、シュワシュワと刺激的な喉越しとスッキリとした爽快感が身体中を駆け巡った。


「はぁ~っ、生き返った!」


 生徒会室での夜鳥くんとのやり取りの後、私は引き続きせっせっと針を動かして数着の執事服を縫い上げていた。
 調子いいので更にもう一着と思ったのだが、何やら肩が重く感じ、そろそろ休憩でもしようかと学食までソーダを買いに来たのである。


「ふぅ……」


 椅子にもたれかかりホッと一息つけば、強張(こわば)っていた体がゆっくりと緩んでいくのを感じた。
 ちなみに学食で売っているソーダは少々凝っていて、色は鮮やかな青いグラデーション。飲むとほのかにラムネの味がする、隠れた人気メニューである。バニラアイスをトッピングするのもオススメだ。


「ああ、もう飲み終わっちゃった……」


 空になったコップを見て名残惜しさを感じながら、これから何をしようかと思案する。
 そのまま生徒会室に戻って衣装作りを続けてもいいが、各班の様子も見に行っておきたい。特に朱音(あかね)ちゃんのポスター制作は気になる! 気になり過ぎる……!


「よしっ、朱音ちゃんのとこに行こう!」


 そうと決まれば、思い立ったが吉日。私はコップを返却し、食堂を後にしようと席を立つ。

 しかし……、


「雪守さぁ~ん」


 唐突に背後から投げかけられた聞き覚えのある猫撫で声に、一瞬にして体が凍りつく。そして次に湧き上がったイヤ〜な予感に、声の主のことは無視しようと思い至った。

 でも無視したらしたで、後が面倒くさいことになるのでは……?


「…………」


 結局無視は思いとどまった私は、熟考の末に〝にこやかに返答する〟という結論を導き出した。