「え?」
「まだ入ったばかりだったんだろ? 温まりきってないのに出たら、湯冷めする。どうせこの時間に入ってくるのは俺達以外いないだろうし、別に男女間違って入っていても誰も気づかない」
「い、いやいやいや! でも……!」
そこは気づく気づかないの問題じゃない気がするの!
真っ赤になって私は首を横に振る。
「いいから」
「あ……」
しかしいざザプンと湯船に身を沈めると、途端に広がる心地良さに抗えず、結局私はそのまま温泉に浸かる。
すると九条くんも温泉の中に入ってきて、私の胸の高鳴りは最高潮に達した。
えっ!? 何この状況!?
なんで九条くんとお互いタオル巻いてるとはいえ、一緒に温泉に浸かってるの!!?
またまた頭が爆発しかけ、これでは湯冷めどころか茹だりそうだ。
火照った体を冷ましたくて、さっさと湯から上がってしまおうと、腰を浮かせる。
――が、その時私に背を向けて温泉に浸かっていた九条くんがボソリと呟いた。
「……月が綺麗だね」
「へっ……えっ!?」
慌てて九条くんを見れば、その視線は真っ直ぐ夜空に浮かぶまあるいお月様へと向いている。
そっか、今日は満月なんだ。
な、なんだ、てっきり私に言われたのかと……。
「……っ!!」
そこまで考えて、また私は顔を赤くする。
