『しかも24時間入り放題な上に、……』


 お湯に浸かれば、体が温まって眠気も起きるかも知れない。
 昼間の朱音ちゃんの言葉を思い出し、私は真っ直ぐ離れの温泉へと向かう。


 ――ガラガラ


 内風呂を抜けて露天風呂に出ると、昼間と違ってヒンヤリとした空気が肩に触れた。
 夏休みも終わり、少しずつ季節が秋めいてきたのを肌で感じる。


「……ふぅ」


 体を洗ってちゃぷんと肩まで湯に浸かれば、強張っていた体がホッとほぐれていくのを感じた。
 あ、なんかいい感じにウトウトしてきたかも。

 しかし瞳を閉じて気持ちよく微睡(まどろ)みかけた、その時だった。


 ――ガラガラ


「!」


 突然誰かが露天風呂に入って来る音がして、慌てて私は目を開ける。もしかして朱音ちゃんか、カイリちゃんだろうか?

 そう思って声を掛けようとしたのだが……、


「~~~~っ!!?」

「ま、まふゆ!?」


 なんと目の前に居たのは、腰にタオルを巻いただけの姿の九条くん!! 
 えっ!? なんで九条くんが女湯に!? まさか九条くんが、夜鳥くん化した!!? 

 あまりの事態に、あわあわと私の頭の中が大パニックになる。


「な、なななな……!?」

「まふゆ、なんで男湯(・・)に……?」

「え゛」


 困惑したような九条くんの言葉、それが耳に届いた瞬間、混乱で爆発寸前だった私の思考が停止する。

 お、男湯……?