「今晩のお夕飯なのだけど、少しだけ日ノ本(ひのもと)(うし)のシャトーブリアンが手に入ったの。限定一名分ではあるのだけれど、そのお肉を使ったステーキを出そうと思うのよ」

「日ノ本牛のシャトーブリアン!!?」


 部長さんの言葉に、私以外の全員が同時に叫んだ。

 シャトーなんとかは聞いたことのない単語だけど、日ノ本牛なら私も知っている。
 日ノ本帝国で一番美味しいお肉の名前だ。高級すぎて庶民にはとても手が届かないけれど。

 でも今日はそんなお肉を食べれるのか。

 ……たった一人だけ。


「…………」


 ゴクリと唾を飲み込む音と共に、全員の視線が交差した。


「つまり……ゲームっていうのは、その日ノ本牛のシャトーなんとかを賭けてって訳ですか?」

「そぉよぉ!〝シャトーブリアン〟ね。肉質がきめ細かくて、お肉がとろけるようにジューシーなのよぉ! 味はこのあたしが自信を持って保証するわ」

「……なるほど。それで一体なんのゲームを?」

「ふふっ」


 私が問うと、部長さんはスッと片手を上げる。
 そしてパチンッとその指を鳴らすと、どこからか現れた燕尾色の制服を着たホテルマン達が、テキパキとラウンジにあるもの(・・・・)を運び込んできた。


「えっ……? それは卓球台!?」

「まさか、部長……!」


 ザワッと驚きに揺れる私達を前に、部長さんは蠱惑的な笑みを浮かべて高らかに宣言する。


「――そう、温泉と言えば卓球!! 誰が日ノ本牛のシャトーブリアンを食すのか、正々堂々卓球で決めましょうっ!!」