「どしたの、その書類の量?」
「水輝に全部押しつけられた。これでこの間のことは水に流すって」
「ああ……」
なるほど。雨美くんらしい仲直りの仕方だ。
とりあえず頑張れと労って、私も席について自分の仕事を始める。
「…………なあ」
「…………」
「…………おい」
しかしその手はすぐさま夜鳥くんによって止められた。
なんだよ、集中してるのにうるさいヤツめ。軽く睨みつけてやれば、何やら珍しく夜鳥くんが戸惑った表情をしている。どうやら何か言いたいことがあるらしい。私は溜息をついて尋ねた。
「何?」
「それって、クラスでやる喫茶店の衣装?」
「そうだけど?」
ほら、と縫っている執事服を見せてやれば、夜鳥くんがすごく微妙な顔をした。
なんだ? 縫い目が荒いとでも言うつもりか?
「お前生徒会の仕事もあんのに、なんでも引き受け過ぎだろ。んなもん、クラスで暇してるヤツらにやらせりゃいーんだよ。人間ってのは、すぐに壊れる弱っちぃ生き物なんだから、あんま無茶すんなよ」
「…………」
言い方はアレだが、私を想っての言葉なのは伝わる。この夜鳥雷護という男は、一度能力を認めた相手には例え嫌いな人間であっても優しいのだ。まぁ、認められるまでが難しいのだが……。
「心配してくれるのは嬉しいけど、私はそんなヤワじゃないし大丈夫だよ。クラスのみんなも私が裁縫得意だから、是非私に作ってほしいって言って――……」
「だから! それが最近九条様と仲が良いお前に女子達が嫉妬した、嫌がらせだって言ってんだよっ!!」
「へ……?」
衝撃の発言にチクチク動かしていた針が止まる。
……嫌がらせ?
「わーマジかぁ」
確かに不審なところはあった。普段それほど親しくもない女子達が、妙に私をヨイショして頼み込んできたのだ。
例の九条くんショックがあった手前、いじめられることも覚悟していたのに、思いがけず頼られたことが嬉しくて、つい二つ返事をしてしまったが……。
